【解決事例】相続発生後に自分たち以外に相続人がいることが判明したら|非嫡出子の相続分
特に自分の父や母が亡くなった場合、相続人は自分達子供以外にいないと考えるのが普通でしょう。現に私もそうです。しかし、数年に1度くらいのペース(といっては不謹慎ですが)で、想定外の相続人が出現することがあります。
今回の相続事案は「相続発生後に自分達以外に相続人がいることが判明したら」。当事務所での実例です。なお、守秘義務違反となることを避けるために事案を特定されないようアレンジしています。文中の氏名・住所・日付等は架空です。
ごく普通の依頼内容
当事務所が毎週土曜日に行っている無料相談に来所され、そのまま受託した事案でした。母は既に数年前に死去、今回は父の相続手続きをという事で、2人兄弟の相続人代表として兄からの依頼です。
依頼内容は、不動産の名義変更と預貯金の解約です。遺産分割の話し合いも兄弟で大まかにはしたらしく、半分ずつ相続する予定のようです。
依頼人の兄は自身の仕事もある為、日中に相続手続きで動くことはできないとのことでしたので、戸籍謄本等の相続関係の書類の収集や、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更の代理を依頼されました。
預貯金の手続については、預金額も多くない為、ご自分で手続きをやるということです。当事務所では日常的に承る依頼内容です。
まずは、戸籍謄本の収集をして相続人を確定する必要がある旨の説明をして、書類が整ったところで連絡する旨の約束をし、その日は終了となりました。
雑談の中で、「うちは兄弟も仲が良く遺産で揉めることがないのが救いですよ」と言っていたのを覚えています。
戸籍調査で非嫡出子が判明
早速、相続人の調査に取り掛かります。被相続人(父)や相続人(兄弟)の本籍は、無料相談の時に伺っているので、被相続人の死亡時の除籍や、相続人の現在戸籍はすぐに集まります。
そして、相続手続きにおいては、被相続人(父)につき、死亡から出生に遡る戸籍謄本が必要となりますので、次にやることはいわゆる「遡り戸籍」を集めることです。
そして被相続人(父)の戸籍の記載事項をつぶさに見ていると「■市■区■番地乙野梅子同籍太郎を認知届昭和23年1月8日受付」の文字が…。
乙野梅子はすでに先に亡くなった母の名ではありませんし、太郎というのも兄弟の氏名とは異なります。ということは、婚姻外で生まれた子供(非嫡出子)がいるという事です。
つまり、相続人は兄弟だけではなく、異母兄弟として太郎もいるということが判明しました。太郎の戸籍も調べると、現在は関西方面に住所があり、存命であることも分かりました。
依頼の時点で異母兄弟がいるという事は聞いておらず、本人たちは知らない可能性が大です。どのように依頼者にこの事実を伝えるかは毎回悩ましいのですが、まずは事実だけを淡々とお伝えするようにしています。
非嫡出子の相続分は最高裁で判例変更があった
ところで、非嫡出子の相続分は最高裁判所で判例変更があり、それを受け、民法の規定も改正されたところです。
従来は、非嫡出子の相続分は嫡出子の半分とされていたのですが、これが「法の下の平等(憲法14条)」に反するとして、違憲判決が出ました(平成25年9月4日決定)。その後、民法の条文が改正されて、非嫡出子と嫡出子の相続分は等しいものとなりました(平成25年12月11日施行)。
具体的にいつ発生した相続なら、この改正法が適用になるかは法務省のページに詳細な説明があります。タイムチャートも載っていて分かりやすいのでご参照ください。
念の為リンクを貼っておきます。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00143.html
ところで今回の依頼は、父が平成26年に死亡したものですので、改正法が適用となります。つまり、兄弟2名と異母兄弟1名の計3名が、3分の1ずつ相続することになります。
おそるおそる依頼人へ報告
まずは、依頼人へ非嫡出子がいることが判明した旨の報告です。もちろんとても驚いた様子でした。生前に父からも母からも他に兄弟がいたとは全く聞いていないという事です。
上記の最高裁の判例や民法改正の経緯なども丁寧に説明しました。内心は穏やかではなかったのかもしれませんが、きわめて冷静に見えました。
非嫡出子への連絡|依頼の結末
そこで次に非嫡出子へ連絡をとります(連絡の取り方にはある工夫があるのですが、企業秘密なのでここではお教えできません)。
数日後、非嫡出子から直接当職宛に電話がありました。
ということで、事の顚末は非常にあっさりしたものでした。異母兄弟の相続分をゼロとする遺産分割協議書を作成し、署名捺印をしてもらい何事もなく手続きを終えた次第です。
これは非常にうまくいったケースと言えます。その要因としては、兄弟がはじめから「3分の1ずつ分ける」というスタンスで臨んだからだと思います。
これが逆に「知らない奴には絶対渡さない」という、相手に放棄を強要するようなスタンスであれば、おそらく遺産分割協議は紛糾したことでしょう。
何事も冷静に対処するのが一番なのだ、という事を依頼者から教えて頂いた貴重な経験でした。
依頼者からの声
手続きを終えて、書類を直接依頼人に手渡しました。その時、次のようなことを言っていたことを覚えています。
相続の無料相談に応じています
私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。
このページでは、「相続発生後に自分達以外に相続人がいることが判明したら」についてお話ししました。同じようなお悩みをお持ちですか?
相続手続きをこれから始めるにはどうすればよいのか、費用はいくら位かかるのか、様々な疑問があることと思います。
毎週土曜日に無料相談を受け付けていますので、この機会にお気軽にお問い合わせください。
お電話(代表042-324-0868)か、予約フォームより受け付けています。
東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
公益社団法人成年後見リーガルサポート東京支部会員
家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
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