【相続司法書士監修】生命保険・共済金の受取人変更はできるか
相続でよく問題になるのが、死亡保険金(死亡共済金)の受け取りについてです。今回は、死亡保険金(死亡共済金)の受取人を生前に変更できるかについて、相続手続き専門の司法書士の視点から考察します。また、もし変更ができないとなった場合の対処法についても解説します。
死亡保険金の受取人は誰でもいいわけではない
死亡保険金の受取人は、保険契約を締結する時点であらかじめ指定します。一般的には自分の配偶者や子供を保険金の受取人と指定することが多いと思われます。しかし、保険契約を締結した後に様々な理由で、受取人を別の人に変更したいと考え直す方がいるのも事実です。
死亡保険金の受取人は2親等内の親族が原則
例えば死亡保険金の受取人を自分の配偶者から子供に変更するのであれば特に問題はありません。どちらも自分の親族だからです。しかし、「お世話になったあの人(親族ではない第三者)」に変更したいという場合は注意が必要です。保険金詐欺や保険金目的の殺人など、保険金を巡っては事件も多いです。ですから、保険会社は赤の他人(友人など)を死亡保険金の受取人とすることに消極的です。約款やホームページ上で、第三者を受取人とすることを認めないとしているところもあります。
第三者を受取人にできる保険会社もある
死亡保険金の受取人を第三者とすることができるか否かは保険会社ごと・保険商品ごとに対応が異なるのが実情です。ですから、自分が契約している保険については、第三者への変更の可否について必ず保険会社へ確認する必要があります。たとえば、大同生命は公式のホームページ上で「第三者への変更も可能」と明記しています。
受取人の変更の可否は【保険と共済では異なる】
死亡保険金(共済の場合は「死亡共済金」と言います)の受取人の変更がそもそも認められるのかについて検討します。まずは平成22年(2010年)4月1日に施行された「保険法」により、従来その適用範囲ではなかった「共済契約」も一般的な保険と同様に扱われるようになった点に注意が必要です。しかし、受取人の変更の可否については、通常の保険と共済では結論が異なります。それぞれの場合に分けて解説します。
生命保険の死亡保険金は原則変更できる
まず、一般的な保険会社で販売している生命保険については、相続開始前(被保険者の死亡前)であれば死亡保険金の受取人を変更できるのが原則です。この点は、保険法第43条で明確に認められているところです。しかし、規約により変更を認めない商品も存在することはある為、必ず保険会社に確認するようにしてください。なお変更のやり方は2つあります。
受取人の変更のやり方①|保険会社で手続きする
1つ目のやり方は、契約している保険会社で保険金の受取人変更の手続を行う方法です。どの保険会社も手順はほとんど同じです。
- 保険会社のコールセンターへ連絡する
- 書類を送付してもらう
- 書類に記入・提出する
- 手続きの完了
受取人の変更は被保険者の同意が必要(保険法第45条)ですから、受取人側から勝手に変更手続きをすることはできません。また書類を提出する際は、契約者の本人確認書類も合わせて提出することが求められるようです。参考までに明治安田生命の公式ホームページの案内をリンクとして貼っておきます。
受取人の変更のやり方②|遺言書を作る
現在は遺言で保険金の受取人を変更することもできます(保険法第44条1項)。もちろんその遺言書は法律上有効なものでなければならないことは当然です。メモ書きのような形で変更を指示しているだけでは足りません。遺言書で受取人を変更する際は、例えば遺言書の中に次のような文言を書いておけば良いでしょう。
実際に相続が開始して死亡保険金を受け取るには、遺言執行者がいれば遺言執行者が、遺言執行者がいなければ保険契約者の相続人(保険法第44条2項)が、保険会社に対して保険金受取人の変更手続きを行うことになります。その際に添付すべき書類は保険会社によって異なりますから、契約している保険会社にお問い合わせ下さい。
なお、遺言で保険金の受取人を変更する場合は、死後に確実に上記の変更手続きを行ってもらえるように、遺言執行者を遺言書の中で予め指定しておくことをお勧めします。
共済の死亡共済金は変更できない場合が多い
そもそも保険金の受取人を変更できるか否かは保険契約の規約によります。上記に揚げた通り、法律上は原則的に変更はできるのですが、契約当事者間の特約(規約)があればそちらが優先されるため、もし規約で変更ができないとなっていれば、当然変更は不可能となります。一般に販売されている生命保険と異なり、共済の死亡共済金(死亡保険金に該当するもの)は規約で変更が場合が多いです。
共済と言っても様々な共済があるため、全部を網羅することはできませんが、代表的な共済を以下に個別に見ていくこととします。
東京都民共済は変更できない
東京都民共済は原則的に死亡共済金の受取人の変更をすることはできません。誰が死亡共済金を受け取るかという点については規約にその順番が定められており(例えば配偶者がいれば第1順位で配偶者が受け取る等)、順番を変更することなどもできません。また遺言で変更することもできないとされています。
例外的に変更できるケースもありますが、例えば結婚していない方が内縁の配偶者(事実婚のケース)を受取人とする等、かなり特殊なケースに限られます。参考までに東京都民共済の公式ホームページの該当ページのリンクを貼っておきます。
■東京都民共済|よくあるご質問|共済金の受取人について教えてください
埼玉県民共済は変更できない
埼玉県民共済も原則的に死亡共済金の受取人の変更をすることはできません。誰が死亡共済金を受け取るかという点については規約にその順番が定められており(例えば配偶者がいれば第1順位で配偶者が受け取る等)、順番を変更することなどもできません。また遺言で変更することもできないとされています。
例外的に変更できるケースもありますが、上記に揚げた東京都民共済と扱いは同じです。参考までに埼玉県民共済の公式ホームページの該当ページのリンクを貼っておきます。
こくみん共済は原則変更できる
こくみん共済は死亡共済金の受取人を変更できるようです。ただし、遺言で変更できるか否かについては規約上は明記されてないように見受けられました。商品によって異なる可能性もある為、事前にサポートセンターなどへ確認をしておくことをお勧めします。
① 契約者の配偶者
② 契約者の死亡の当時、その収入によって生計を維持していた契約者の子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹
③ 契約者の死亡の当時、その収入によって生計を維持していた契約者の配偶者の子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹
④ ②に該当しない契約者の子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹
⑤ ③に該当しない契約者の配偶者の子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹
(4) (2)および(3)の規定にかかわらず、契約者は、共済事由が発生するまでは、所定の書類により被共済者の同意および当会の承諾を得て、(3)の死亡共済金受取人の順位または順序を変更することができます。また、死亡共済金受取人を(3)以外の契約者の親族等に指定または変更することができます。
JA共済は変更できる
JA共済は死亡共済金の受取人を変更できるようです。遺言での変更も可能です。ただし商品によって異なる可能性もある為、事前にサポートセンターなどへ確認をしておくことをお勧めします。
● 共済契約者は、法律上有効な遺言により、死亡共済金受取人を変更することができます。
●死亡共済金受取人を変更する場合は、被共済者の同意が必要です。
● 遺言による死亡共済金受取人の変更は共済契約者が死亡された後、共済契約者の相続人または遺言執行者が組合に通知してください。
COOP共済は変更できる
COOP共済も死亡共済金の受取人を変更できるようです。遺言での変更も可能です。ただし商品によって異なる可能性もある為、事前にサポートセンターなどへ確認をしておくことをお勧めします。参考までにCOOP共済の公式ホームページの該当ページのリンクを貼っておきます。
■COOP共済|「保険法」施行についてのお知らせ|死亡共済金受取人の指定・変更
相続の前に約款の確認や共済へ問い合わせが必要
死亡保険金(死亡共済金)の受取人の変更は、保険会社で変更手続きを行う場合も、遺言で行う場合も、相続開始前(本人が存命中)に限られます。相続が開始してしまうと受取人の変更はできません。
また、上記で解説したケースについても保険契約を締結した時期や商品の種類によって結論が異なる場合があります。さらに今後の約款の見直しによって結論が変更されることもあります。必ず契約している保険会社へ事前に問い合わせをして確認をする必要があります。
保険金の受取人の変更はできないと言われたら…
もし生命保険金(共済金)の受取人の変更はできないと言われたら、その対処法としては次の3通りが考えられます。
1、別の生命保険(共済)に切り替える
2、特定の銀行口座にある預金を相続・遺贈する(遺言書の作成)
3、生前贈与する
まず1つ目の方法は、現在の保険(共済)を解約し、別の生命保険(共済)に切り替えてしまうというやり方です。このようにすれば最初に指定した受取人に保険金が受け取られることはありません。しかし、現在の保険(共済)を途中で解約すると一定の不利益を受ける場合があるので慎重に検討すべき方法と言えます。
そして2つ目の方法は、遺言書を作成するやり方です。保険金を受け取ってもらいたいといういう事は、その方に現金を与えたいという事ですから、保険金以外の別の財産(たとえば預貯金)を与えるような遺言書を作成すれば良いのです。しかし、この方法では最初に指定した受取人に保険金が受け取られることを防ぐことはできません。
3つ目の方法は生前贈与をするやり方です。2つ目の方法で書いたことと同じですが、保険金を受け取ってもらう代わりに、別の財産を「生前に」受け取ってもらうというものです。この方法の注意点としては、2つ目の方法と同様に最初に指定した受取人に保険金を受領されてしまうことは避けられないという点と、贈与する金額によっては贈与税が課税される点です。
2つ目の遺言を作成する方法、3つ目の生前贈与の方法であれば、当事務所にご相談ください。自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、最適な方法のアドバイスを受けるようにしましょう。
無料相談を受け付けています
私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。
このページでは、「【相続司法書士監修】生命保険・共済金の受取人変更はできるか」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、受取人の変更ができない時の対処法も含めて解説しました。
この問題は専門家の立場からしても非常に難しい問題を含んでいます。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。
遺言書で保険金の受取人を変更する場合の具体的な手続き、遺言執行者の指定、生前贈与のやり方や贈与税の金額など他にも様々な疑問があることと思います。
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東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
公益社団法人成年後見リーガルサポート東京支部会員
家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
公益財団法人東京都中小企業振興公社「専門家派遣事業支援専門家」登録