【司法書士監修】遺産分割終了後に遺言書が発見されたら|ケース別

2023年11月8日

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相続人間で遺産分割協議をした後に、遺言書が見つかったらどうなるのでしょうか?すでにした遺産分割はそのまま有効なのか、それとも、遺言書の内容が有効なのか。

実際に遺言書が出てきたと想定して、その時どう対処すればよいかを順を追って考察、まとめてみました。

1、まずは遺言書が有効か否かを確認する

遺言書が発見された場合は、まずその遺言書が法的に有効か否かを確認する必要があります。もちろん一般の方には難しいので、相続手続きの専門家に判定してもらいましょう。

遺言書が無効なものであれば、すでになされた遺産分割協議通りのままで大丈夫です。

反対に、遺言書が有効となると次のステージになります。

2、原則的には遺言書の内容が優先する

遺言書は故人の最終の意思と言われる重要なものです。ですから、原則的には遺言書の内容が優先します。遺言書の内容を知らないで遺産分割協議をしたとしても、遺言書に記載されている内容が優先し、協議の内容と抵触する部分は無効になります。

しかし、遺言書の内容を理解承諾したうえで、相続人全員がすでにした遺産分割協議の内容をそのま維持することは有効と解されています。ただし、遺言執行者がすでにいる場合には、相続人の合意だけでは足らず遺言執行者の承諾が必要となります。

もちろん、相続人中の1人、または遺言書の内容で財産を貰い受けることになっていた相続人以外の者(受遺者)から、クレームが出れば、法律通りに処理せざるを得ず、再度の遺産分割協議等を余儀なくされます。

3、【まとめ】遺産分割協議後に遺言書が発見された場合の法律上の処理方法

それでは、法律に沿って正しく処理するとどうなるのでしょうか。簡単な事例を設定して、具体例で紹介し、結論をまとめてみました。

【事例】 すでにAとBで遺産分割協議済み。その後に遺言書が見つかる。登場人物は3名。
・相続人A
・相続人B
・相続人ではないC
「○○に遺贈する」という内容の遺言書 ①「Cに全て遺贈する」 ■遺産分割協議は無効
■遺言書が有効
②「Cに遺産全体のうち2分の1を遺贈する」 ■遺産分割協議は無効
■Cを加えてABC3名で再度遺産分割協議が必要
③「Aに遺産全体のうち2分の1を遺贈する」 遺産分割協議の内容と比較して遺言書の方がAに有利であれば遺言書が有効で、協議は無効。
④「A(またはBまたはC)に自宅を遺贈する」 ■遺言書が有効
■遺産分割協議は一部無効。自宅を除いた部分について再度分割協議が必要。
「○○に相続させる」という内容の遺言書 ⑤「A(またはB)に相続させる」 ■遺産分割協議は無効
■遺言書が有効
⑥「A[またはB)に自宅を相続させる」 ■遺言書が有効
■遺産分割協議は一部無効。自宅を除いた部分について再度分割協議が必要。

専門的に見てはっきりしない部分も多いのですが、概ね遺言書が優先するという認識でよろしいかと思います。

左|司法書士 齋藤遊  右|司法書士 今健一 お気軽にお問い合わせください!

4、後から遺言書が発見された場合の不動産登記手続きについて

事例によって異なります。はっきりとした扱いがあるものが以下のものです。

共同相続人全員ために相続登記がされた場合において、その後に当該不動産を相続人の1人に「相続させる」旨の遺言書の存在が判明した時は、相続登記を当該相続人の単独名義とする更正登記をすることができる。昭和28年8月10日民甲第1392号

これは上の表の⑥です。更正登記によって持分が増加する相続人と、反対に持分を失う相続人が共同して行います。

持分が増える人から勝手に登記申請をすることはできません。なお、所有権更正登記は専門家でないと難しい登記手続きです。

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