公正証書遺言書があれば万事大丈夫なのか
遺言書の作成を考えている方からのご相談でよくあるのが、「自筆のものと公証役場でつくるものとどちらがいいのでしょうか」というものです。どちらも一長一短であるところ、総合的には公正証書遺言書が優れており、どんな実務家に聞いてもそれは同じ答えだと思います。
今回は、「公正証書遺言書があれば万事大丈夫なのか」というテーマで、公正証書遺言書さえあれば問題ないだろうとお考えの方へ一石を投じたいと思います(というのは大げさです)。
公正証書遺言書の優位性
自筆証書遺言の危険性
直筆で自分の手で紙にしたためるのが「自筆証書遺言」です。それに対して、公証役場で公証人に作成してもらうのが「公正証書遺言」です。
自筆証書遺言は、手軽に自分で作成できる反面、偽造・紛失が避けられません。今のところ自筆証書遺言はその保管場所に法律的な決まりはないためです。そのため、遺言書の内容をよく思わない相続人によって握りつぶされたり、内容を書き換えられたりすることがあります。
記憶に新しいところで言うと、京都で有名な「一澤帆布」というかばん屋さんの事件ですね。この事件は、2通の内容の異なる自筆と思われる遺言書が発見され、その内容が正反対のものであることから親族間で骨肉の争いとなったものです。
結局、後から作成された遺言書が偽造であるとの判定がなされ、1通目の遺言書が有効となりました。このように、自筆の遺言書は思い立った時に作成できるのですが、必ずしもその内容が実現されるとは限らないと心得ておくべきものかもしれません。
しかし、この度、40年ぶりに相続法が改正され、自筆証書遺言を法務局で預かるというサービスが創設されました。この法律がスタートすれば、少なくとも紛失・隠匿は防ぐことができるでしょう。ただし、制度がスタートするのは平成32年7月10日からですからまだもう少し時間があります。
自筆証書遺言の保管制度についてはこちらに詳しい記事を書きました。
公正証書遺言は安全?
それに比べれば、公正証書遺言はその原本を公証役場で保管してもらえるわけですから、紛失・隠匿・偽造のリスクはほとんどないと言っていいでしょう。ですから私たち専門家も「自筆証書遺言はおやめなさい」とアドバイスするわけです。
しかし、そうでありながら公正証書遺言があるから万事大丈夫とは言えないのでは?とわざわざ問題提起するのは何故かと言って、公証役場における作成手続きが形式的である点です。
公正証書遺言があっても問題が起きることはある
公正証書遺言を作成する場合、ほとんどは弁護士や司法書士、あるいは遺言信託サービスを扱う信託銀行が関与してなされることが多いでしょう。
このとき、実務の現場では具体的にどのように遺言が作成されているかと申しますと、
- 本人から専門家が遺言書に書きたい希望を伺う
- 専門家が文案を作成し公証人と打ち合わせる
- 公証人は予めそれを確定原稿として文書にしておく
- 公証役場における作成期日において、公証人はそれを本人に読み聞かせる
大雑把ですが、このような感じです。
そうすると、遺言書の内容が細かければ細かくなるほど、本当に本人が了承した内容なのか、誰かに先導された内容なのではないか、そもそも本人の意思に基づかないものなのではないか等々あらぬ疑いをかけられる可能性もあるわけです。そして実際に問題となった裁判例もあります。
また、公証役場における作成期日においては、公証人は必ず本人の意思確認を行いますが、これも経験上公証役場によってまちまちと言わざるを得ません。
ですから、完全に「ウラ情報」になりますが、「あそこの公証役場は意思確認がゆるい、こっちは厳格」などとランク付けのようなものがあり、認知症に近いような人については、わざわざ意思確認が緩やかな公証役場を選んで遺言書を作成させるということもあるとかないとか…。
公正証書遺言を完全なものとするためには
このように公正証書遺言があっても、その後本人の意思能力などに疑いが欠けられることがあるので、これを未然に防ぐ対処法を講じる必要があります。
私たち相続手続き専門の司法書士事務所では、いくつかの策を講じるようにしておりますが、その一例を言えば、本人の直筆のメモは残してもらうようにするのが望ましいです。
決して第三者に導かれて作成したものではなく、そもそも本人の希望によるものだという証拠を残しておく姿勢が重要です。これは自筆遺言書のように形式を整える必要まではないので、動画や会話を録音したものでも十分でしょう。
せっかくなら万全な遺言書を作成したいと思いませんか
私たちこん・さいとう司法書士事務所では、これまでたくさんの遺言書作成サポートを行ってきました。遺言書作成サポートとは、必用書類の収集から、文案のアドバイス、作成、公証人との打ち合わせなどをすべて代行し補助するサービスの事です。
公正証書遺言を万全とするいくつかの策も講じますので、相続に不安を抱える方にはぴったりのサービスと考えます。
当事務所では毎週土曜日に無料相談を行っています。事前予約制ですから、お電話か予約フォームより予めご予約くださいませ。お気軽にお問い合わせください。
東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
公益社団法人成年後見リーガルサポート東京支部会員
家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
公益財団法人東京都中小企業振興公社「専門家派遣事業支援専門家」登録