相続開始前の遺産分割協議は法的に有効か?
相続に関する身近なテーマを取り上げて記事を投稿しています。今回は、「相続開始前の遺産分割協議は法的に有効か?」です。
相続が開始する前に予め遺産分割協議書を作成し署名捺印をした場合、その遺産分割協議書は法的な拘束力を持つのでしょうか。
遺産分割協議は相続開始後にするのが原則
法定相続人が誰であるか、どのようなものが遺産に含まれるのか等は相続の開始(故人の死亡)によって初めてその内容が確定するものです。それまでは、単なる可能性の問題であり、相続開始前に遺産分割協議をしても無効です。
この点については以下の過去の裁判例があります。
遺産分割協議とは
そもそも遺産分割協議とは一体何でしょうか。これに関してはこちらに詳しい記事があります。もしよろしければお読みください。
相続開始前の遺産分割協議を有効にする方法
相続開始前の遺産分割協議が無効であることは上記の通りです。それでは、これを有効とするための方法はないでしょうか。
過去の裁判例では、相続開始前にされた無効な遺産分割協議について、相続開始後に相続人全員が追認(事後の同意のことです)すれば翻って有効とする趣旨のものがあります(東京地裁平成6年11月25日判決)
登記手続き等に遺産分割協議書を使えるか
相続開始前の遺産分割協議が、相続開始後に相続人の追認により有効となったとしても、遺産分割協議書の日付が相続開始前の日付である場合は、その書面をもって登記手続き等の財産承継手続きを行うのは難しいと思われます。
実体上(民法という法律世界で…という意味です)は有効だからと言って、相続開始後に相続人全員の追認があったかどうかは書面上読み取ることができないからです。したがって、死亡日前の日付が記載された遺産分割協議書で相続手続きを行うのは難しいでしょう。
あまりお勧めできる方法ではありませんが、もし生前に遺産分割協議書を作成しておきたいというのであれば、次の方法が考えられます。
1、日付を空欄にして遺産分割協議書を作成し、死後に相続人全員の同意のもとに、同意が整った日付を記入する
2、相続開始前の日付で遺産分割協議書を作成し、死後に同じ内容の遺産分割協議書を作成する(日付は死後の協議が調った日を記入)
まず「1」について。死亡前の日付を入れてしまうと、死後にその書面を使って相続手続きを行うのは難しくなるため、日付はブランクとします。
そして「2」について。こちらは死亡前の日付を記入してしまいます。そして死後に同じ内容のものを作成し、そちらには死後に協議が作成した日付を記入します。
「1」「2」のどちらも、相続開始前の遺産分割協議自体に何の法的拘束力もないことを前提としています。しかし、生前に同意が整っているならばその意思の確認として書類を作成しておいて、死後もその内容をお互い遵守しようじゃないか…という言わば「紳士協定」を締結するわけです。
もちろんその「紳士協定」に法的な意味は何もないわけですから、どちらの方法によっても、相続開始後に意思を翻すことは何ら法に反しません。
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東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
公益社団法人成年後見リーガルサポート東京支部会員
家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
公益財団法人東京都中小企業振興公社「専門家派遣事業支援専門家」登録