【司法書士監修】事実上の相続放棄はお勧めできない理由と正しいやり方


「相続が開始したが、財産や借金は全部他の相続人が相続することになったため、私は相続放棄したい。裁判所の手続きを使わない『事実上の相続放棄』というやり方があると聞いたのですが…」
相続放棄は法律上、期限があり、家庭裁判所で手続きをしなければならない、など一般の方にはなかなかハードルが高いものとなっています。
この方法を使わずに『事実上の相続放棄』ができるのなら、そのやり方が知りたいですよね。
同じようなお悩み・疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
このページでは、創業20年以上、地域随一の相続専門の司法書士事務所であるこん・さいとう司法書士事務所が、『事実上の相続放棄』について解説します。
『事実上の相続放棄』結論から言うとお勧めできない
まずは結論ですが、『事実上の相続放棄』はあまりお勧めできるものではありません。
相続放棄をするのであれば、原則通り、家庭裁判所の手続きを使ってやるべきだと考えます。ただし、家庭裁判所の手続きを使う場合は、期限(相続の開始を知ってから3か月以内)があります。
この期限をすでに過ぎているような場合は、やむを得ず『事実上の相続放棄』の方法によるしかないのかもしれません。
『事実上の相続放棄』をお勧めできない理由は
それでは、相続放棄を含む相続全般の手続きを毎日扱っている「相続専門司法書士事務所」の実務家の視点から見て、『事実上の相続放棄』をおすすめできない理由を3つ説明します。
もらえるものがないのに相続手続きに協力することになるから
『事実上の相続放棄』は、必ず相続人全員の遺産分割協議により行われます。やり方については下の項目で詳しく説明しますが、早い話が「相続手続きに協力する」ことに違いありません。
具体的に「相続手続きに協力する」とはどういうことかと言いますと、自分の戸籍謄本や印鑑証明書を用意して相手方の相続人へ提出したり(しかもこれは基本的に戻ってきません)、相手が作成してきた「遺産分割協議書」に署名・押印して返却したりすることです。
場合によっては、銀行や証券会社の相続手続書類に、署名や押印を求められることもあるかもしれません。
あなたが、預金や不動産など何か遺産を相続できるのであれば、このような相続手続きにいちいち協力する意味もあるのかもしれません。
しかし、何も遺産は相続しないのであれば、わざわざ積極的にかかわりたくないと考えるのが普通ではないでしょうか。
もし、家庭裁判所で相続放棄の手続きをすれば、これはあなただけでできる手続きです。
相続放棄の手続きが完了した後、家庭裁判所から送付される相続放棄の証明書類を他の相続人に渡せば、あなたは相続手続きに一切関与する必要がなくなります。
戸籍謄本や印鑑証明書を提出する必要もありませんし、遺産分割協議書などの書類に署名や押印をする必要もなくなります。
債務を相続した相続人が弁済しなければ自分が払うことになるから
もし、債務を引き継ぐことになった相続人が、その後に返済を怠ったらどうなるのでしょうか?
その場合は、債権者から請求があれば、あなたも支払う必要があります。
この時に支払う金額は、債務の全額ではありません。
債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務は、法律上当然分割され、各相続人がその相続分に応じてこれを承継する(最判昭和34年6月19日)
この判例によれば、法定相続分の割合に応じた金額を弁済することになります。
仮に遺産分割協議書にあなたは債務を承継(相続)しない、と書いてあっても、それだけでは当然に免責されないということです(ただし下で説明するように債権者の承諾があれば免責されます)。
単に遺産分割協議書に署名押印するだけで債務が免責されるわけではないので、この点は注意が必要です。
そもそも債権者の承諾がなければ無効だから
相続人の1人だけ(あるいは特定の複数人)が被相続人の借金を引き継ぐことになっても、これは相続人全員だけでは決められないことです。
かならず債権者(銀行や消費者金融などの貸主側)の承諾・合意が必要です。
つまり、相続人同士で遺産分割協議をするだけでは、債権者との関係では無効ということです。これは一般の方はあまり知らないことかもしれないので十分に注意してください。

もちろん相続人の間では、だれが故人の借金を弁済するかを決めたわけですから、その点は完全に有効です。しかし、それは相続人での勝手な取り決めなので、債権者は関係がありません。
そこで、遺産分割でだれが借金を引き継ぐかを決めるにあたっては、事前に債権者の同意を取り付けておく必要があります。
債権者は、この相続人間の取り決めに同意することもあれば、同意しないこともあります。
債権者側に同意しなければならない義務はないので、同意しないとなれば、『事実上の相続放棄』は失敗です。
債権者が同意してくれれば、債務を引き継いだ相続人がその後に支払いが滞っても、それをあなたが肩代わりする必要はありません。
『事実上の相続放棄』に債権者は承諾するのか?|実務の動向
『事実上の相続放棄』に債権者は同意することもあれば、同意しないこともある、と上で説明しました。
それではどのような場合なら同意が得られて、どのような場合なら同意は得られないのでしょうか。
当事務所は、事務所開設以来、20年以上にわたって相続手続きを専門に行ってきましたが、その経験を踏まえて言えば、つぎのようなことが言えます。
- 担保がある場合(銀行・信用金庫)→同意してくれる(ただし別途の契約が必要)
- 担保がない場合(消費者金融)→同意してくれない
担保がある場合は同意してくれることが多い
担保がある場合とは、借金が弁済できなくなったときの備えとして不動産を抵当に入れている場合のことです。
原則として、銀行や信用金庫は担保がないと融資はしません。反対に、担保があるので、債務者について誰が借金を引き継ごうがあまり関心はないとも言えます。
しかし、当然に同意するということはなく、債務者の変更について別途契約を締結することを条件に同意する場合がほとんどです。
別途の契約とは、具体的には「債務者の変更契約」や「免責的債務引受契約」などです。
そして、債務者の氏名や住所は不動産の登記簿(登記事項証明書)にも記載される事項ですから、「債務者の変更登記」もあわせて行うことが前提の条件となります。
担保がない場合は同意してくれないことが多い
故人の借金が消費者金融からの借り入れだったり、クレジットカードの場合は、通常は担保は差し入れていません。
ですから、このような場合は、債権者は同意してくれないことが多いです。
『事実上の相続放棄』の法律的に正しいやり方
それでは『事実上の相続放棄』の法律的に正しい手順を説明します。
まずは債権者に聞いてみる
相続人同士でだれが被相続人の借金を引き継ぐかは話し合いなどで大体決まっていることを前提に説明します。
すぐに「遺産分割協議書」にして署名や押印するのではなく、書面にする前に、まずは債権者の意向を伺います。
債権者としても即日回答が出せる案件ではないので、多少の時間はかかります。ここで同意が得られなければダメなのでこの方法はあきらめてください。
遺産分割協議書への署名や押印|債権者との債務者の変更契約
債権者の内諾が得られたら、多くの場合「遺産分割協議書」を提出してください、と言われます。
あるいは、「相続登記(土地建物の所有権の移転登記)を先に済ませてください」と言われるので、その通りにしなければなりません。
つまり、債権者の内諾が得られてから、遺産分割協議書に署名や押印をするという段取りになるわけです。
債権者側で必要な情報を確認出来たら、債務者の変更契約をすることになります。
債務者の変更契約書(免責的債務引受契約であることが多い)は金融機関が所定の様式のものを持っていますので、これに署名や押印をします。
登記が必要な場合は登記手続きの実行
故人の借金について不動産の担保がある場合は、債務者の変更登記が必要となりますので、「相続登記」が済んだ後に、債務者の変更登記をします。
この費用は相続人側が負担します。

『事実上の相続放棄』でもいい場合とは
そもそも故人に借金・債務がなければ『事実上の相続放棄』のやり方でも全然問題はありません。
また、故人の借り入れに不動産の担保があり、容易に債権者(金融機関)の同意が得られそうな場合も、『事実上の相続放棄』のやり方で良いでしょう。
「こん・さいとう司法書士事務所」が選ばれる理由
いかがでしょうか。
以上で説明したように、『事実上の相続放棄』を法律的に正しい手順でやるためには、専門的な知識が必要になることはお分かりいただけたでしょうか。
「こん・さいとう司法書士事務所」に遺産分割協議書の作成・債権者との調整を依頼することで上記のお悩みは解決
以上を踏まえまして、当事務所「こん・さいとう司法書士事務所」が、これまで多くの上記のようなお悩みをお持ちの皆様から、相続放棄に関する確実な相続手続きの依頼先に選ばれている理由を以下にお伝えします。
- 一般的な司法書士ではなく「相続専門」であるため、相続に関連する裁判所に関する手続き(不在者財産管理人、失踪宣告、遺産分割の調停の申立、相続放棄、相続財産管理人の選任など)、遺言書の作成、遺言執行にも精通しているため安心感がある
- 「相続専門」だからこそ、個別の事例に応じた的確なアドバイスを貰える(『事実上の相続放棄』が可能かどうか?)
- パートナー税理士と連携して相続税の申告や準確定申告にも速やかに対応してもらえる
- パートナー弁護士と連携して他の相続人への交渉や、裁判手続きも対応してもらえる
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- 20年以上のキャリアがある司法書士2名(今健一・齋藤遊)体制の為、一般の個人事務所より迅速に対応してもらえる
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最後に|無料相談の連絡は今すぐ
こん・さいとう司法書士事務所は、遺産相続の手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で20年以上に渡って運営、相続問題・相続に関連する業務に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。
- 『事実上の相続放棄』とは特定の相続人に借金を引き継いでもらうやり方
- 『事実上の相続放棄』は何も相続しない相続人には特にメリットはないやり方
- 『事実上の相続放棄』をするなら普通に家庭裁判所で相続放棄の手続きをしたほうがいい
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東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
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