【司法書士】相続登記は義務化されたが過去の相続につき何もしてない方に向けて
相続登記は、令和6年4月1日から義務となりました。「過去の相続にも適用されるの?」という質問を受けることがよくあります。
これまでは相続登記は義務ではなかったので、相続登記がされていない状態のままの方も多いのではないでしょうか。
このページでは、創業20年以上、地域随一の相続専門の司法書士事務所であるこん・さいとう司法書士事務所が、過去の相続について相続登記が済んでいない方に向けて、手順や気をつけなけれなばらないこと、誰に相談したり依頼すればよいのかなど、よくあるお悩みの解決法を解説します。
相続登記の義務は「過去の相続」にも適用あり
相続登記が義務化されたのは令和6年4月1日ですが、それ以前に発生した相続についても相続登記の義務は適用されます。
「それ以前」というのは制限がないので、大正時代の相続だろうと昭和だろうと平成だろうと、相続登記がなされていないのであれば、相続登記を済ませる必要があるという意味です。
この場合、3年の猶予期間がありますので、実際には令和9年3月31日までに名義変更の登記を申請しなければなりません。
なお、正当な理由もなく相続登記を申請しない場合、10万円位以下の過料の対象となります。ペナルティです。
(過料)
第百六十四条第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。|不動産登記法164条|e-Gov法令検索
さっさと過料を払って問題を解決できるか
10万円という過料の金額を聞いてどう感じますか?「意外に安いな」と思う方もいるかもしれません。
というのは、実際に相続登記をやるとなるとこれ以上の費用はかかるからです。内容にもよりますが登録免許税と言って国に納める税金が数万円、司法書士に支払う手数料が10~20万円程度かかります。
そのため「過料を払って済むなら別に相続登記はやらないままでもいいか」となってしまうのではないかという懸念です。実はこの法律を改正する際に、学者や有識者で構成される法制審議会で取り上げられた点でもあったのです。
まだこの改正法が施行されて間もないので、現時点で実情はわかりませんが、少なくとも過料を支払ったから相続登記の義務を履行したということにはなりません。
国にお金(過料)を払っても相続登記の義務は解消していないのであれば、何の問題の解決にもなっていないということです。
「正当な理由」があれば相続登記を申請しなくても良いとは言うが…
義務とはいいながら、法律上は「正当な理由」があれば相続登記は申請しなくてもよいとなっています。
しかし、専門家の観点からみて「正当な理由」が認められるようなケースはあまりないのではないでしょうか。
当事務所にある相談として「長年遺産分割の話合いがまとまらない」という理由で相続登記が放置されているケースが最も多いのですが、残念ながらこれは「正当な理由」にはあたりません。
法務省の通達による「正当な理由」の具体例はこれです
法務省の通達の中で、相続登記を3か月以内にしなくてもよい「正当な理由」が列挙されています。
法務省の通達とは「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続登記等の申請義務化関係)(通達)(令和5年9月12日付け法務省民二第927号通達)」です。ご参考までに以下の通りです。
相続登記の義務の履行期間内において、次の(1)から(5)までのような事情が認められる場合には、それをもって一般に「正当な理由」があると認められます。
もっとも、これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事情に応じ、登記をしないことについて理由があり、その理由に正当性が認められる場合には、「正当な理由」があると認められます。
(1) 相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
(2) 相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
(3) 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
(4) 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
(5) 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合
「正当な理由」はいつ、どうやって、誰に言えばいいのだろうか?
相続登記の義務が履行されてないことを法務局が察知すると、法務局から「催告書」が郵送されます。
その通知書には要約すると次のように書いてあります。
「あなたは相続登記の義務を履行していません。●月●日までに相続登記をしてください。もし相続登記をしなければ裁判所に過料の制裁を科してもらうように通知します。ただし登記していないことに正当な理由があるならこの用紙に記入して返送してください」
一見すると何かの詐欺のような通知ですが「●月●日までに振り込んでください」とは書いてないので、その点が詐欺かどうかを見分けるポイントとなるでしょう。
正当な理由を記入する欄は、用紙1枚丸々ですので、かなり大きなスペースが設けられています。
つまり、正当な理由を主張する時期は、法務局から「催告書」が通知されたタイミングで行えば良いということです。
よくある相談|昔の相続で協議がまとまらずそのまま…
それでは、以下に3つ、相続登記の義務化の関連で当事務所によくある相談を紹介します。
まずは、昔の相続で遺産分割協議がまとまらず、相続登記も放置されてそのままになっているというケースです。非常に多いトラブルですね。この問題を解決するために他のみなさんはどうしているかを解説します。
根本的な解決は協議を成立させることしかない
この問題を子どもや孫の世代にまで先送りにさせたくないと言うのであれば、遺産分割協議を再開し、成立させるしかないでしょう。
ただし、すでに話し合いが暗礁に乗り上げているということは、話し合いに応じない人がいるとか、話し合いが平行線だとかいう理由でしょうから、相続人本人同士が進めるのは難しい、同じことの繰り返しになる可能性が高いです。
そのような場合の解決方法は次の2つのどれかになります。
- お互いに弁護士を選任して、弁護士同士で話し合ってもらう
- 家庭裁判所の遺産分割調停を利用する
このようにして遺産分割が成立したら、最終的に相続登記を申請・完了することになります。
とりあえず過料を免れる方法をとりたい場合は…
上で説明したように、問題を解決するには遺産分割を成立させて相続登記を申請するしかないわけですが、その方法が取れない場合は、とりあえず過料を科されたくないので、そちらの方法を知りたい、となるでしょう。
この場合の解決方法は次の2つのどれかになります。
- 相続人申告登記を申請する
- とりあえず相続人の1人から相続人全員名義で法定相続分通りで相続登記を申請する
「1.相続人申告登記」は相続登記の義務化に伴い新設・スタートした制度で「相続登記」とは全然意味が違います。自分は相続人の1人ですよ、と申出をしているだけの登記です。
もちろん登記簿には記載されますが、これをとりあえずやれば過料にはしませんよと、政府が用意した抜け道みたいなものです(政府としては誰が相続人かさえ判明すれば公共事業の妨げにはならないと言う事でしょうか)。
よくある相談|不動産を相続したかどうか分からないのですが…
よくある相談として2番目に紹介する事例は次のようなものです。
「亡くなった父は土地や建物をいろいろな場所に所有していたらしいのですが、私はその不動産の詳しい場所などは全くわからないです。このような不動産についても3か月以内に相続登記をしなければならないのでしょうか?」
相続登記は「自分に相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内」にすることが義務付けられています。いずれの事実を「知った日」から3年はスタートします。
上の事例ですと、父が死亡したことは知っているようですが、父の不動産の所有権を相続により取得したことまでは知りようがありませんから(そもそも場所を知らないため)、相続登記は義務となりません。
というより、場所が不明の不動産について、相続登記をやりようがないという話ですね。
よくある相談|協議はすでに終わっていて兄が相続したが相続登記はしていないようだ…弟の私にも過料はある?
よくある相談として3番目に紹介する事例です。遺産分割の協議自体はすでに終了していて、例えばその際に不動産は兄が相続すると定めていたが、兄が相続登記を放置し現在に至る、というケース。
この場合、相続登記を怠っている兄が過料の対象になるのは当然ですが、弟も同罪となるのか?という相談です。
弟は不動産を相続しないことに協議が成立しているので、弟は過料の処分とはなりません。
過料までの流れ|いきなり過料は請求されない?!
相続登記の義務が履行されてないことを法務局が察知するのはどんな時なのでしょうか。「相続人が不動産を相続した日を知った日」を法務局がいちいち個別に調査することはありませんので、相続登記をしていなくてもバレないだろう、と思うかもしれません。
確かに多くの場合、相続登記をしていなくても登記所にそのことがすぐにバレるということはほとんどなかろうかと思います。
法務省のHP(「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)の中で次のように説明されています。
登記官は、相続人が不動産の取得を知った日がいつかを把握することは容易ではありませんので、次の(1)又は(2)を端緒として、義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、申請の催告を行うものとしています。
(1) 相続人がある不動産について遺言の内容に基づく所有権移転登記の申請をしたが、その遺言書には別の不動産も登記申請した相続人に相続させる旨が記載されていたとき
(2) 相続人がある不動産について遺産分割の結果に基づく相続登記の申請をしたが、その遺産分割協議書には別の不動産も登記申請した相続人が相続する旨の記載がされていたとき
かなり専門的でわかりにくい内容だと思いますが、実務的には「登記留保」といって、例えば遺産分割協議書中のA不動産は相続登記を申請して、B不動産はやらないでおく、といったことも事情によりあるのです。
このときB不動産は相続登記が済んでないので、3年以上経過したところで法務局から相続人に催告書が送付される、ということのようです。
過料までの大まかな流れ
過料までの大まかな流れは次のようなイメージです。
- 相続登記の義務が履行されていないことを法務局が察知
- 法務局から相続人へ「催告書」を送付
- 「催告書」に記載された期限内に登記がされない場合、登記官は、裁判所に対してその申請義務違反を通知
- 裁判所が相続人へ「過料の決定(●円を支払え)」の通知を送付
話しは飛びますが、同じ登記でも、会社の登記にも同じような過料の制裁があります。例えば会社の役員が交替したのに、その登記を怠っている、というようなケースで過料の対象となります。
「過料なんてそうそうないだろう」と高を括っているかもしれませんが、会社の登記の様子を見ていると、割と簡単にバンバン過料の制裁はされているのを実際に目の当たりにしています。
「こん・さいとう司法書士事務所」が選ばれる理由
以上を踏まえまして、当事務所「こん・さいとう司法書士事務所」が、これまで多くの上記のようなお悩みをお持ちの皆様から、長期に渡り放置された相続の相談先・依頼先に選ばれている理由を以下にお伝えします。
- 一般的な司法書士ではなく「相続専門」であるため、相続に関連する裁判所に関する手続き(成年後見人の手続き、遺産分割の調停の申立、相続放棄、相続財産管理人の選任など)にも精通しているため安心感がある
- 「相続専門」だからこそ、長期の相続登記の放置案件にも事例に応じた的確なアドバイスを貰える
- パートナー税理士と連携して相続税の申告にも速やかに対応してもらえる
- パートナー弁護士と連携して他の相続人への交渉や、裁判手続きも対応してもらえる
- 弁護士・法律事務所より割安な料金で、しかも弁護士より敷居が低く、相談がしやすい環境にある
- ZOOMによるオンライン対応が可能なため、直接事務所に行けなくてもコンタクトが取りやすい
- eKYCによるオンライン本人確認に対応しているため、遠方からも依頼ができる
- 東京都中小企業振興公社(都内の中小企業を支援する東京都管轄の公的機関)の嘱託相談員であるため身分的な信頼感がある
- 20年以上のキャリアがある司法書士2名(今健一・齋藤遊)体制の為、一般の個人事務所より迅速に対応してもらえる
長期に放置された過去の相続に関する相談先・依頼先を探されている方が、これらの点を1つでもメリットに感じていただくことができたなら、是非一度当事務所の無料相談をご利用ください。
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こん・さいとう司法書士事務所は、遺産相続の手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で20年以上に渡って運営、相続問題・相続に関連する業務に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。
- 相続登記は過去の相続にも一律に適用があること
- とりあえず過料を免れたいなら方法はあること
- 過料は、いきなり支払え、とはならないこと
放置された過去の相続登記を、なるべく相続人の負担を少なく行いたいのであれば、ノウハウを有する経験豊富な私たち相続手続きの専門家をご活用・お任せいただければと思います。
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