相続登記の義務化の法案が成立【相続専門司法書士監修】

2023年11月8日

国会議事堂
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あなたはすでに相続登記を終えていますか?近い将来、終えていないと最高で10万円の過料に処せられます。

令和3年4月21日、「民法等の一部を改正する法律案」が開催中の通常国会で成立しました。

特に重要な法律改正は、「相続登記が義務になる」という点です。今回は最新情報も交えながら「相続登記の義務化」についてまとめてみました。

相続登記が義務になるのは3年内|具体的には令和6年度から

相続登記が義務化されるのは、「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日(附則第1条第2項)」からです。

「3年後から」という意味ではありません。「3年内のいつかわからない日から」という意味です。

法案は本国会で成立、公布されました。このように考えると、まだ相続登記が終わっていない方は令和6年までに相続登記を完了しておく必要がありますが、それは令和5年までかもしれません。

個人的には「戸籍の広域交付(別の市町村の戸籍も最寄りの役所で取得できるシステム)」が令和5年度からスタートする予定ですから、相続登記の義務化もこれに足並みをそろえ、令和5年度からになるのではないかと予想していました。

しかし、実際には令和6年4月1日からと閣議決定されました。

相続登記の義務に関する法案はこんな内容

それでは「相続登記を義務付ける法案」がどのような内容なのか。関係がある部分だけ全文を掲載します。その後、専門家の視点から解説します。

【相続等による所有権の移転の登記の申請(新設)】
新不動産登記法第76条の2
①所有権の移転登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により所有権を取得した者も、同様とする。

②前項前段の規定による登記(民法第900条および901条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第4項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

③前2項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

土地や建物の所有権の相続に限る

不動産(土地と建物)の所有権の相続に限って、相続登記が義務となります。ただし「相続」だけではなく「遺贈」により所有権を取得した場合は、遺贈の登記が義務となります。

「遺贈」とは、遺言書の中で「◯◯に財産を遺贈する」と書いてある場合のことです。
遺贈によって相続人以外の方が財産を受けることもありますが、その場合は登記は義務ではありません。

相続から3年以内に登記しなければならない

法案通りに正確に言うなら「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」となります。

遠縁の親せきが亡くなったようなケースでは、死後数年経過してから相続の開始を知ることもあります。しかし、自分の親兄弟が亡くなったようなケースでは、そのような事情は認められにくいと言えます。

「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」=「死亡の日」ではありませんが、一般的には限りなく近い日となるでしょう。

一度した相続登記を修正する場合は要注意

たとえば相続人が数人いて、なかなか話し合いがまとまらない場合に、次のような方法をとることがあります。

「とりあえず法定相続分通りで相続登記をやっておきますか」

そして、後日に遺産分割協議が成立したときに、協議の内容に合致するように相続登記を修正します。今回の改正で、この修正の登記は「遺産分割の日から3年以内」に行わなければならないとされました。

義務を免れる例外はほとんど無い

相続人が自ら所有権の相続登記をやらなくてよい場合も一応規定はあります。それは「代位者その他の者の申請又は嘱託により」相続登記がされた場合です。

不動産が銀行から差し押さえられたり、税金の滞納などを理由に国などから差し押さえられているケースです。

この場合は、銀行や国が競売するわけですが、手続き上、相続登記が未了の不動産の競売はできないとされているため、銀行や国が相続人に代わって相続登記を行ってくれます。

なお、相続の放棄をした者(裁判所で相続放棄の申述の手続をした方)は、法律上、初めから相続人とはならなかったものとみなされるため、このような義務を負うことはありません。

注意しなければならないのは、次のような例外は認められないという事です。

  • 遺産分割の話し合いがまとまっていないから相続登記はできない
  • 原野など価値のない不動産だから相続登記はしたくない

相続登記ができない・したくない場合の方法

上記のように、相続登記をしたくてもできない、あるいは今すぐにはしたくないという方もいます。

今回の法案では、このような場合の代替措置についても用意をしています。詳しくは当事務所の別のページで詳しく解説しています。

相続登記の義務化に備える|新たに創設される制度とは【司法書士監修】

こちらの代替措置を行っておけば「登記を申請する義務を履行したものとみなす(新不動産登記法第76条の3)」となり、とりあえずは問題解決です。

相続登記を行わない場合の罰則は最高10万円

相続登記の申請義務を負う相続人が、期間内にその申請を行わなかったときは、制裁として違反者を10万円以下の「過料」に処する旨の罰則があります(新不動産登記法第164条第1項)。

【過料と罰金の違いは?】
ここで言う「過料」は罰金とは異なります(お金の支払いが必要という意味では同じですが…)。罰金は刑法上の刑罰です。ですから、もし罰金が科されれば、いわゆる「前科者」となります。現在の法律で、刑罰として認められているものは、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料・没収の7種があります(刑法第9条)。このうち、「科料」と「過料」は同じ読み方をするので誤解の多い点です。「科料」は刑法上の刑罰ですが、「過料」は違います。それでは、「過料」とは何でしょうか。過料にはさまざまな性質のものが存在しますが、ここで言う「過料」は、行政上の軽い義務違反があった場合に、行政により課される制裁の一種です。ですから、刑罰ではありません。そのため前科者にもなりません。

詳しくは当事務所の別のページでも解説しています。

【司法書士監修】どうすれば相続登記の義務化の罰則を免れるのか?

「法律施行前に相続登記未了」の人にも適用

また、この罰則は、次の方に適用されます。

  • 新しい法律が施行された後にはじめて相続が開始した方
  • 現に相続が開始し、新法施行日の時点でまだ相続登記を申請していない方

この点については、別のページに詳しい解説をしていますので、もしよろしければお読みください。

■【司法書士監修】相続登記の義務化|いま手続き未了の世帯にも罰則適用か?

 

なぜ相続登記は義務化されるのか?

そもそも相続登記の義務化は、政府が進める「所有者不明土地問題の解消に向けた取組」の一つとして位置づけられます。

その背景には、不動産の登記簿に記録されている所有者と連絡が取れないことにより公共事業の用地取得ができなくなったり、東日本大震災の復興の妨げとなったりしたことがあります。

これを「所有者土地不明問題」というのですが、その最大の原因が相続登記の放置にあるとされていて、社会問題になっています。

現行の法律では、不動産の所有者に遺産相続が開始しても、相続登記を義務付ける法律はなく、もちろん罰則もありません。そしてそのことにより、相続人に次の相続(いわゆる二次相続)が開始するなどして、最終的に相続登記が複雑かつ困難となってしまっているケースも増えています。

所有者不明の土地は、2016年で約410万ヘクタール(九州くらい)存在しているという統計があります。このまま放置すれば2040年には約720万ヘクタール(北海道くらい)に増加すると計算されています。これは国益を損ねる状態と考えられます。国としてもこれらの実態を見過ごすわけには行かないのでしょう。

そこで政府は、所有者土地不明問題を解決する取り組みに着手。政府の具体的な取り組みは、内閣府法務省民事局の資料「所有者不明土地問題の解消に向けた取組」を参照ください。

「相続登記の登録免許税が0円になる法」は相続登記の義務化に向けての伏線

平成30年度の税制改革により、相続による土地の所有権の移転登記について、本来納めなければならない登録免許税が期限付きで免税となる優遇措置が定められました(租税特別措置法第84条の2の3)。

これは、令和3年3月31日までに相続登記の「申請」をすれば免税になるという措置です(相続税とは無関係で、登記の際にかかる税金が節税できるだけです)。

登録免許税の免税措置が受けられるケースは2つだけで、かなり特殊なケースに限って優遇措置を利用できます。この法律の詳しい内容については別のページがあります。

■【2021年最新版】いまなら相続登記の登録免許税の免税措置あり

この制度は、一定の条件を満たす相続登記の登録免許税を免除することにより、相続登記を促進し、長期間相続登記が未了である土地に関する問題を解消することにある、と説明されています。

つまり、政府は、本来徴収できる税金(登録免許税)を0円にしてでも、所有者不明土地問題を解決する姿勢でいて、これは相続登記の義務化に向けての伏線であるとも考えられます。

相続登記の義務化に向けていまやるべきこととは?

もしかすると、相続登記の義務化を心配している人は、相続登記を怠っている方だけかもしれません。幸いなことに、本国会で法案は成立しましたが、今すぐ義務となるわけではありません。

相続登記が義務となるまでは長くて3年の猶予があるので、今から相続登記を準備することは遅くありませんし、十分な時間的余裕があります。

相続登記を怠っている方には、ほとんどの場合理由があります。しかし、今回の改正は理由を問わず相続登記(またはその代替措置)が義務となりますので、速やかに対処法を考えるしかない状況となりました。

相続登記を怠っている理由は様々ですが、個々の事案に正確な解決方法を提案できるのは、相続手続きを専門としている事務所です。専門家に任せる場合はその点も注意すべきでしょう。

いずれにしましても、このページでお伝えしたかったことは次の2点です。

  1. 令和6年4月1日から相続登記は義務となること
  2. 相続登記をしなければ罰則があること
ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでは、「相続登記の義務化の法案が成立【相続専門司法書士監修】」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。

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