【司法書士監修】相続放棄のデメリットのみを詳しく解説するページ
被相続人(亡くなった方)に借金などの負債があり、これを相続したくない場合にする手続きとして相続の放棄という手続きがあります。相続が発生してから一定の期間に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
確かに被相続人の債務を相続したくないときに、非常に便利な制度です。しかし、デメリットは本当にないのでしょうか。何も検討することなく、安易に相続放棄を選択して良いのでしょうか。
このページでは、創業20年の相続専門の司法書士事務所が「相続放棄のデメリットのみを詳しく解説するページ」として、あなたの悩みを解決するための情報を分かりやすくお伝えしていきます。
このような問題で悩んでいるかたの参考になれば幸いです。
相続放棄のデメリットをまず知っておく必要がある
結論から申し上げますと「相続放棄のデメリット」は存在します。ですから、相続放棄の手続きを決断する際には、このことをよく理解していなければなりません。
詳しいことは以下で順にお伝えします。まずは、どのようなデメリットがあるか。代表的なものを箇条書きで紹介します。
- 銀行預金や自宅も相続できなくなる
- 一度相続放棄をしてしまうと後から撤回はできない
- 別の相続人へ借金を押し付けることになる
- 相続放棄をしても自治体から空き家の管理責任を問われたりする
デメリットばかり強調すると相続放棄をためらってしまいますが、相続放棄の最大のメリットは、被相続人の借金を一切引き継ぐことがないということ、これに尽きます。
また、故人に債務が有っても無くても、遺産相続に全く関わりたくなければ、相続放棄をすることによって、他の相続人に印鑑証明書や委任状を預けたりする必要もなくなります。このようなことも相続放棄のメリットと言えるでしょう。
それでは上でお伝えした相続放棄のデメリットをもう少し詳しく解説していきましょう。
預貯金や自宅も相続できなくなる
相続放棄のデメリットとして1つ目は、「相続放棄をすると預貯金や自宅も相続できなくなる」という点があげられます。
相続放棄は被相続人の遺産をすべて放棄するという家庭裁判所で行う手続きです。
「すべて放棄する」わけですから、借金だけでなく、預貯金や不動産など価値のあるものもすべて放棄することになります。故人名義の株式や投資信託などもすべて放棄することになるのです。
特に、自宅が故人の名義になっている場合は注意が必要です。相続を放棄すると自宅不動産にも住むことが出来なくなりますから、相続放棄以外の方法を慎重に考える必要があります。
借金は相続したくないけど預金は相続したい
原則として、相続放棄の手続きでは「借金は相続したくないけど預金は相続したい」という望みはかないません。
上でお伝えしたように、相続放棄は被相続人の全財産を放棄する手続きですから「相続したい財産としたくない財産」を選択するようなことは不可能なのです。
しかし「相続の限定承認」という別の手続きを家庭裁判所で選択すれば、ケースによってはこのようなことが可能になることもあります。「限定承認」については、当事務所の別のページで詳しく解説しています。
「限定承認」は故人の相続財産のなかで、マイナス財産(借金)が多いのかプラス財産(預貯金や不動産)が多いのか分からないときに使う手続きです。
「限定承認」はプラス財産からマイナス財産を返済して、もし余りがあれば相続人が相続できます。余りがなかったり、そもそも故人が残したプラス財産では完済に足りなかった場合は、そこで手続きは終わりで債務は放棄されるという特徴があります。
「限定承認」は手続きに長い時間がかかるのと、高額な費用がかかることもあり、ほとんど利用されていない手続きです。
一度相続放棄をしてしまうと後から撤回はできない
相続放棄のデメリットとして2つ目は、「一度相続放棄をしてしまうと後から撤回はできない」という点があげられます。民法という法律には次のように定められています。
(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
その理由は、一度相続の放棄がされたにもかかわらずその撤回が認められてしまうと、他の共同相続人や債権者の立場を不安定にしてしまうなど、相続による法律関係に混乱を招くことになるからです。
ですから相続を放棄する場合は、被相続人の債務だけでなく、預貯金などの財産も事前に調査したうえで行うことをお勧めします。
もし預貯金などの遺産が多ければ、そちらを相続した上でその中から債務を返済し、残りの遺産を相続することができますから、あえて相続放棄の手続きをしないで済むのです。
別の相続人へ借金を押し付けることになる
相続放棄のデメリットとして3つ目は、「別の相続人へ借金を押し付けることになる」という点があげられます。
確かに自分が相続の放棄をすれば、あなた自身が債務を負担することはなくなります。しかし、その代わりに、その債務は原則として別の相続人へ相続されることになります。
つまり、あなたの相続放棄により、あなた以外の相続人はトラブルに巻き込まれることになるのです。
例えば、簡単なケースとして 、借金を残して死亡した父に子供が2名いたとします。このうちの子供1名が相続放棄をしたとすると、それ以外の子供1名が債務全部を負うことになってしまうという話です。
この場合、もう1名の子供も相続放棄すれば、子供は2名ともに債務を相続しないで済みます。
しかし、その場合、死亡した父に兄弟がいれば兄弟が借金を相続することになりますし、父の兄弟姉妹がすでに死亡していれば、その子が相続することなります。
話が分かりにくくなってきましたが、いずれにしても、あなたが相続放棄をすれば別の親族が債務を承継することになり、一言でいえば「迷惑をかける」ことになります。
相続を放棄するなら「相続人の順位」は知っておくべし
ここで一つ覚えておきたい知識として「相続人の順位」があります。
相続権は順番があります。まず、第一順位の相続人がいればその人が相続し、これがなければ相続権は移り、第二順位の相続人が相続します。それもなければ第三順位の相続人が相続します。
つまりあなたが相続放棄をすれば、次の順位の相続人が相続権を取得することになります。
そして第三順位の相続人もいなければ「相続人はいない(相続人不存在)」となります。
これらの相続人の関係というものは、戸籍・戸籍謄本を調べることによって確認することができます。
参考までに「相続人の順位」の一覧表を下にお伝えします。
相続人 | 配偶者 | ||
第一順位 | 子 | 被相続人に子がいれば子と配偶者が相続。配偶者がいなければ子だけ相続。 | 配偶者がいれば配偶者は常に左記の配偶者以外の相続人と同順位で相続。 |
第二順位 | 父母 | 被相続人に子がいなければ父母と配偶者が相続。配偶者がいなければ父母だけ相続。 | |
第三順位 | 兄弟 | 被相続人に子も父母もいなければ兄弟姉妹と配偶者が相続。配偶者がいなければ兄弟姉妹だけ相続。 |
相続人の順位につきましては、当事務所の別の記事で詳しく説明しています。相続放棄と相続順位の関係も、もう少し詳しく解説していますのでよろしければお読みください。
相続放棄をしても自治体から空き家の管理責任を問われたりする
相続放棄のデメリットとして4つ目は、「相続放棄をしても自治体から空き家の管理責任を問われたりする」という点があげられます。
不動産を相続することになったが、そもそも住むことができない、維持費がかかるといった理由で相続放棄を検討する事例は多いです。
しかし、相続放棄をしたからと言って、空き家の管理責任がすべて当然に免責されるかというと、必ずしもそうとは言えないのが現状です。
民法の規程には、相続放棄をした方の責任を次のように定めています。
(相続の放棄をした者による管理)第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089|e-Gov法令検索
つまり、次の順位の相続人が管理できるようになるまで、管理責任は継続すると定めています。管理責任を免責するとは言っていないのですね。
相続放棄をした人にも空き家の管理責任はあるのか
また、空き家法(空き家等対策の推進に関する特別措置法)の中にも、相続放棄の手続きをした方も、一定の管理責任は負うという規定があります。
(空家等の所有者等の責務)第三条 空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426AC1000000127_20150801_000000000000000|e-Gov法令検索
この規定の中の「管理者」に相続放棄者が含まれるというのが一般的な考え方です。
したがって、相続財産の中に空き家がある場合には、この管理責任の問題もセットで検討し対策を考えなければならないのです。
具体的にどのような責任を負うのかについては、当事務所の別のページで詳しく解説しています。
■【解決事例】相続放棄したら空き家はどうなるのか?(空き家法から読み解く)
また、相続放棄者の管理責任について定めた民法の規定は、令和5年度より改正されることが決定しています。これについても、当事務所の別のページで詳しく解説していますので、もしよろしければお読みください。
相続放棄のデメリットのようで実はデメリットではない点
相続放棄をすると、被相続人に関係する金銭などは一切受け取れないと思われており、これが相続放棄のデメリットと考えているかもしれません。
基本的にはその通りですが、中には相続放棄をしても受け取れる財産というものは存在します。
受取人が相続人となっている死亡保険であれば、相続放棄に関係なく受け取ることができます。また、香典や霊前も相続財産ではないため、相続放棄に関係なく受領することが可能です。
しかし、同じ保険金でも故人が受取人となっている入院保険や傷病保険は相続財産となるため、相続放棄をした以上は受領できませんし、もし受け取ってしまうと「単純承認(相続を認めた)」となり、相続放棄はできなくなります。
また、被相続人と「生計を同じくしていた」親族が受け取れるとされる「未支給年金」は、こちらも相続放棄に関係なく受領ができます。
つまり、「相続放棄をしたら何も受け取れない」というのは間違いで、中には受領できるものもあるという事実です。
*何が受け取れるか否かの個別のお問い合わせはご容赦くださいませ。
さいごに|いまなら無料相談が受けられます
私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでは、「【司法書士監修】相続放棄のデメリットのみを詳しく解説するページ」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。
このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。
- 借金だけ相続放棄するということはできない
- あなたが相続放棄をすると次の順位の相続人に迷惑がかかる
- 相続放棄をしても空き家の管理責任を問われる可能性はある
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東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
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家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
公益財団法人東京都中小企業振興公社「専門家派遣事業支援専門家」登録