子供なしの相続で円満に遺産分けしたいあなたへ【司法書士監修】
子供のいない夫婦の相続手続きがどれほど大変なものか、あなたは完全に理解していると言えますか?
「まだ先のことだから、いずれ考えればいい」と思っていませんか?あるいは、いま正に相続手続きで困っているのかもしれません。
相続手続きを専門とする当事務所は、過去20年にわたって同じようなお悩みを抱える相続人の方に対して有効なアドバイスを行い、円満な遺産分けのお手伝いをしてきました。
このページでは、「子どもなしの相続でどうしても知っておかなければならない法的な知識(理論武装)」と、「どうすれば円満に相続手続きを終わらせることができるのか」について解説します。
すでに相続が開始して困っている方も、これからの相続が不安な方も、どちらにも役立つ情報です。
「子供なし」だから「全部配偶者が相続」とはならない
まず、結論からお伝えすると、子供なしの相続は手続きが難航する可能性が高いです。その理由と解決法をこのページでは順に解説していきます。なぜ難航するのか、法的な知識を多少理解する必要がありますので、必要な点だけを紹介します。
上の図を見てください。AとBは結婚しています。その後にBは死亡しました。夫婦の間に子供はいない。という図です。この場合、遺産をAが全部相続できるのか?という問題があります。あなたもこのようなケースですか?
Aの気持ちとしては、「2人で築いた財産だから当然全部自分が相続できる」となりますが、残念ながら法律上はそうはなりません。
「子供なし」の相続は兄弟も相続人に…
それでは子供のない夫婦の場合、財産は誰に相続されるのでしょうか。上の図を見てください。亡くなったBに兄弟がいます。兄Cと姉Dです。兄と姉という事例にしましたが、これが弟や妹であってもこれからお伝えする結論は同じです。
さて、結論をお伝えすると、もしBに兄弟がいれば、配偶者Aだけでなく、兄Cと姉Dも共同で相続人となります。この場合の、法律上の相続分ですが、配偶者Aが4分の3、兄弟CDが合計で4分の1(これを兄弟が人数で等分しますので各8分の1)となります。
ちなみに、もしBの親がまだ生きていれば、兄弟は相続人にはならず、親が相続人になります。しかし、一般的にすでに親は亡くなっているケースが多いので、事例としてはこちらを取り上げました。
さらに、Bの親は亡くなっていて、Bがもともと一人っ子(兄弟もいない)であれば、Bの遺産は配偶者Aがすべて相続できます。
兄弟がすでに死亡していれば「全部配偶者が相続」?
それでは、亡くなったBに兄弟はいるが、すでに亡くなっているケースはどうなるのでしょうか?
上の図を見てください。姉Dはすでに死亡しています。この場合、残った兄弟Cと配偶者Aだけが共同で相続する、という誤解が多いのですが、そうではありません。
もちろん姉Dはすでに死亡している為、直接の相続人にはなりませんが、姉が相続できる相続分は姉の子Eが代わって相続していきます。これを代襲相続と呼びます。代襲相続については、別のページで詳しく説明しているので、もっとよく知りたい方はそちらを参考にして下さい。
ちなみに、姉Dに子供がいなければ、相続人は兄Cと配偶者Aだけとなります。もしDに配偶者がいても、その配偶者は相続人にはならず、相続とは無関係です。
【保存版】代襲相続のすべて|代襲相続をわかりやすく|司法書士監修
兄弟の配偶者も相続人になるケースも!?
子供なしの相続では、兄弟が相続人になることはお分かりいただけましたか?これだけでも大変なことになりそうだと不安になると思いますが、さらに兄弟の配偶者までもが相続人になるケースもあります。決して珍しい事例ではありません。
上の図を見てください。姉DがB死亡後に亡くなったというケースです。たとえばBの相続手続きを放置している場合は、このような事になりやすいです。相続手続きを放置していると、相続人の数が雪だるまのように増えていくという典型例です。
この場合は、法律的に言うと先に説明した「代襲相続」ではなく、「数次相続」「再転相続」と呼ばれます。つまり、1回目の相続の後にさらに2回目の相続が開始したというイメージです。
この場合の結論を言いますと、姉の夫F、姉の子E、兄C、配偶者Aの4名が相続人になります。姉の子Eが未成年であった場合は、今後の遺産分けの話し合い(遺産分割協議)にあたって、裁判所で特別代理人を選任する手続きをとらなければならないなど、通常よりもさらに難航する要素が多くなります。
これからどうすれば良いのか?|兄弟との遺産分割
ここまでお伝えした内容は次の通りです。
- 子供なしの相続では、配偶者が全部相続するのではない
- 兄弟がいれば配偶者と共同で相続する
- 亡くなった兄弟に子供がいれば兄弟の子と共同で相続する
- 兄弟が後に亡くなった場合はその配偶者も相続人になる
さて、問題はこれからどうすればいいのか?です。自分の他にも相続人がいることが分かったら、その相続人と遺産分けの話し合いを行うなど、共同で相続手続きを行わなければなりません。
ここでは、子供がいない相続で「ぜひ押さえておきたいポイント」をQ&Aでご紹介します。
兄弟に連絡する期限はあるのですか?
相続手続きの協力を求めたり、そもそも死亡したことを知らない相続人へ相続開始の連絡をする「期限」はありません。ただし、相続手続きそのものには期限が定められているものもあります。
たとえば、準確定申告は4か月以内ですし、相続税の申告は10か月以内に行わなければなりません。他にも期限のある手続きはあるため、いつまでも放置して良い訳ではありません。なるべく速やかに他の相続人へ連絡をする必要があります。
寄与分を主張して多く相続できるのか?
確かにそのようなケースもありますが、一般論としては難しいです。「寄与分」は亡くなった夫の財産形成について、療養看護するなどして「特別の寄与」をした場合にのみ認められる「ボーナス」のようなものです。
しかし、配偶者にはそもそも「扶養義務」があるため、「療養看護をするのは当たり前(特別の寄与にはあたらない)」との前提があります。ですから、配偶者に寄与分が認められる可能性は少ないと言っていいでしょう。
寄与分については別のページで詳しく解説しています。もっとよく知りたい場合はそちらを参考にして下さい。
「全部配偶者が相続したい」という主張はありか?
遺言書があれば大丈夫です。「遺産はすべて配偶者に相続させる」という内容の法律上も有効な遺言があれば、遺産は全部配偶者が相続できます。兄弟には遺留分もありませんので、特に兄弟の同意を得る必要もなく相続手続きが可能です。
反対に、遺言書がなければ、他の相続人との話し合い次第となります。あまり強い主張をしてもよい結果は生まれません。ただし適切な話の進め方をすれば、全部とはならなくても、法定相続分より多く相続できる可能性はあります。
代理人を立てて遺産分けの話し合いを進めて良いか?
できます。ただし、何をいつ任せるのかは慎重に判断した方が良いでしょう。たとえば、あなたが逆の立場だった場合、相続が開始した後にいきなり弁護士から連絡が来たらどう思いますか?
「何で本人から直接連絡が無いんだ?」「相続を争うつもりなのか?」と感じませんか?
代理人として遺産分けの交渉ができるのは、法律上は弁護士だけです。ですから、交渉事も含めて全部任せたいというのであれば、弁護士に依頼するしかありません。これは確かにあなたにとって楽な方法かもしれませんが、相続が上手く行く方法とは限りません。
子供なしの相続手続きを円満にするには方法がある
それでは、子供なしの相続手続きを円満に行うには、どうすれば良いのでしょうか?まずは、次をご覧ください。
- 最初から全部弁護士に任せる
- 最初から「全部相続したい」と主張する
- 他の相続人へなかなか連絡をしない
これらは、子供なしの相続でよく見かける対応ですが、どれも「良い結果が出ない典型パターン」だと考えて良いでしょう。良い結果を出すのは簡単です。誰でも実践ができます。
1.まずは自分でできることをすべてやる
弁護士に任せるのは、遺産分割の話し合いが決裂してからでも遅くはありませんし、むしろそうすべきです。はじめは、自分でできることは自分で行いましょう。では何をすればよいのでしょうか?
子供なしの相続の場合は、遺産の全部はあなたが管理しているはずです。兄弟が知りたいのは、その遺産の内容です。これも含めて、他の相続人へは次の情報を提供することをお勧めします。
- 法定相続人は誰か
- 法定相続分はどれだけか
- 遺産はどれくらいか(財産目録)
これらはできるだけ正確なものであることが大事です。法定相続人は戸籍謄本で調査して、法律上間違いない情報を伝える必要があります。また、法定相続分もインターネットで拾った情報ではなく、法律に基づいた正確なものでなければ意味がありません。
また、最大の関心事ともいえる「遺産の内訳」も、相続人が知りたい情報が網羅されていて、なおかつ法律的にも問題のないものでなければなりません。
2.法定相続分から話をはじめる
配偶者の気持ちとしては「生活のこともあるし全部相続したい」となるのは当然ですが、兄弟にも法定相続分がありますので、はじめから強い主張は避けるようにします。
まずは「法定相続分通りで分けたい」という「建前」が重要となります。その後「法定相続分通りで分けたいが私にも生活があるのでいくらかでも多く相続させてほしい」と徐々にシフトしていきます。
これが成功するか否かは、あなたと他の相続人との関係性やこれまでの経緯など様々な事情に左右されますが、いずれにしても話の初めから「全部相続させてほしい」で成功した事例を知りません。
3.手続や書類作成は専門家に任せる
「1.まずは自分でできることをすべてやる」と矛盾するかもしれませんが、手続きや書類作成は司法書士等の専門家に任せることが大事です。
なぜなら、法定相続人を戸籍謄本で正確に調査したり、法律上間違いない相続分を特定できるのは、相続手続きに熟練したプロだけだからです。専門家であれば、その調査結果をまとめた書類(相続関係説明図や遺産配分表など)を、専門家の署名を入れた形で作成できます。
さらに、相続人の一番興味のある「遺産の内訳」にしても、配偶者が作成する「財産目録」より、専門家が作成する「財産目録」の方がより信頼性が高まります。なぜなら、そこに第三者であるという客観性と、国家資格を有する者という専門性が付与されるからです。
これにより「他にも遺産があるのではないか」といったあらぬ疑いをかけられる危険性を最小限に抑えることができます(もちろん専門家に対しては正確な情報開示が必要となりますが…)。
ただし、これら専門家の作成した書類を、専門家がいきなり他の相続人へ送付しても、結局全部を弁護士に依頼した場合と同じ反応をされかねません。
この辺りの「急所をとらえたやり方」は、相続手続きを専門としている事務所でなければ対応できない問題です。専門家に任せる場合はその点も注意すべきでしょう。
さいごに|いまなら無料相談が受けられます
私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでは、「子供なしの相続で円満に遺産分けしたいあなたへ【司法書士監修】」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。
「子供なしの相続」は兄弟との話し合いが不可欠の為、非常に難しいものではありますが、このページで書いてある方法を実践してもらえれば「いきなり裁判」といったことは避けられます。
「自分でできることは自分でやり、専門家のサポートを受けるべきところはしっかり助言を受ける」という姿勢が理想的ではありますが、ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。
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令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
公益社団法人成年後見リーガルサポート東京支部会員
家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
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