【司法書士監修】配偶者居住権を登記しないとどうなるか?

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相続税対策などを理由に、配偶者居住権の利用を考えている方も多いと思います。

あるいは、遺言で配偶者居住権を夫(または妻)から取得したという相続人の方も少しずつ増えています。

この配偶者居住権、登記をしなければどうなるのでしょうか?

また、事情があって登記ができない場合、何か不都合はあるのでしょうか?登記をする義務があるのかないのか…。

同じようなお悩み・疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。

このページでは、創業20年以上、地域随一の相続専門の司法書士事務所であるこん・さいとう司法書士事務所が、配偶者居住権を相続や遺贈で取得した後、登記をしなければどうなるか?について解説します。

また、登記できない場合の対処法や、そうならないための工夫の仕方などについてもあわせて解説します。ぜひ参考にしてください。

配偶者居住権は登記しなくても成立する

配偶者居住権は、住み慣れた家に、配偶者が死亡後も、もう片方の配偶者が無料で住み続けることができる権利のことです。

令和2年4月1日以降に発生した相続からあらたに法律上認められた権利です。

配偶者居住権は配偶者であれば当然に取得できる権利ではありません。つぎのどれかの事情によって権利を取得する必要があります。

  1. 遺産分割協議
  2. 家庭裁判所による遺産分割の審判
  3. 遺贈(生前に作成された遺言書)
  4. 死因贈与(生前に作成された契約書)

「1」は相続が開始してから、相続人との話し合いによって配偶者居住権を取得できるようにすることですね。

「2」は「1」の話し合いが整わない場合です。

「3」は亡くなった人が生前に遺言書で配偶者居住権を譲るように書いている必要があります。

「4」は亡くなった人とその配偶者で、生前に「死因贈与契約」という契約をしている必要があります。

上にあげたどれかにあてはまれば、配偶者居住権を取得することができます。

そして配偶者居住権を取得した後に、登記をする義務があるか?ということですが、結論を言いますと、義務はありません。

もっとわかりやすく言いますと「登記をしていない配偶者居住権も法律上は認められる」ということです。

令和6年より相続登記が罰則付きで義務化されましたが、配偶者居住権の登記は義務化されていません。ですから、法律上は「登記するかしないかは自己判断」ということには一応なります。

また、相続税などでメリットを受ける際も、登記していない配偶者居住権であっても、特に問題はありません。

配偶者居住権を登記しない人は普通いない

配偶者居住権は、法律上登記する義務はなく「登記するかしないかは自己判断」と上で説明しました。

では、実際に配偶者居住権を「登記しない」人はどの位いるのかというと、実際の統計はないものの、実務家の感覚としては「普通いない」という感じです。

それはなぜでしょうか。

建物を相続した相続人との間では、登記しなくても問題はない

まず、建物を相続した相続人がいるはずですが、この人との関係においては、配偶者居住権は登記していなくても、特に問題はありません。

法律的な話になってしまいますが、配偶者居住権を取得した人と、建物の所有者は「当事者の関係」と言えますので、権利を主張できて当たり前、と考えられるからです。

登記しなければ、建物の所有者が入れ替わったら、立ち退きになる

では、相続人が建物を相続した後に、この建物を売却したらどのようになるでしょうか。

もし配偶者居住権が登記されていたら、そんな建物を買う人はいません。実際に住んでいる配偶者がまだいるわけですから当然です。

しかし、登記されていなければこれを知らずに買う人もいるでしょう。法はそのような「第三者」を保護します。

つまり、その時点で「配偶者居住権があるので私は住み続けます」と言っても、法律上は認められません。

結局、買主から立ち退きを命じられたらそれに応じる義務があるのです。

あるいは、建物を相続した相続人がこの建物を差し押さえられて競売されたとします。この場合も結論は同じです。

配偶者居住権を登記しなかったために、どこにも住む場所がなくなってしまうのです。

もちろん登記してなければ、仮に裁判しても勝てる見込みはありません。

ですから「登記しない人は普通いない」という結論になるのです。

配偶者居住権を登記しない理由を考えてみた

配偶者居住権を登記しない理由とは何でしょうか。専門家の視点で考えてみました。

  • 登記しなくても問題ないと思っていた
  • 登記する必要があることを知らなかった
  • 登記をするのにお金がかかるから
  • 誰に頼めばいいのか知らなかった

配偶者居住権を登記する前提として、まずは建物の相続登記をする必要があります。

相続登記はすでにお伝えしたように罰則付きで義務化されています。それもあって「相続登記は必ずするものだ」という認識が少しづつ一般の人にも浸透してきたように思います。

しかし配偶者居住権は義務化されていませんし、最近増えてきたとはいえ、まだまだ利用する人は少ない制度ですから、上にあげたような理由で登記しない人はいるかもしれません。

配偶者居住権が登記できない理由も考えてみた

「反対に」と言いますか、配偶者居住権を登記したくても登記できない、という人も一方でいるのではないでしょうか?

配偶者居住権を取得しながら、登記ができない理由も考えてみました。

  • 建物の相続人と不仲
  • 建物の相続人が手続きに協力してくれない
  • 固定資産税の負担に関する誤解がある

建物の相続人からすると、タダで建物を使わせることになるわけですから、面識がなかったり、もともと不仲だったりすれば、配偶者居住権を登記までして確保させたいとは思わないかもしれませんね。

「配偶者居住権の登記に協力しない」は許されるのか?

法律上、許されません。

(配偶者居住権の登記等)
第千三十一条 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2 第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。

|e-Gov法令検索 民法

配偶者居住権の登記は、権利を取得した配偶者と建物を相続した相続人が共同で申請する必要があります。

それぞれ別の司法書士に依頼するのではなく、両方が同じ司法書士に依頼する必要があります。

そして、民法1031条1項にある通り、建物を相続した相続人は「登記を備えさせる義務を負う」ことになっています。

「配偶者居住権の登記に協力しない」ときはどうすればいいのか

配偶者ひとりでは配偶者居住権の登記は申請できません。

ですからこのような場合は、面倒で費用も時間もかかってしまいますが、裁判所に訴えを提起する必要があります。

裁判所で勝訴判決を得れば、配偶者が単独で配偶者居住権の登記を申請することが可能となります。

「配偶者居住権が登記できない」を防止する対処法はないか?

「配偶者居住権を登記しない」のは危険なので、それはすぐにやってください、というしかありません。

それでは「配偶者居住権が登記できない」ことを未然に防ぐ対処法は何かないものでしょうか。

もともと相続人同士で面識がなかったり不仲だったりすることが理由となることが多いので、その点は工夫の施しようはないのですが、その他に法律上可能な範囲での対策を説明します。

遺産分割協議書には登記義務や費用負担の条項も入れておく

相続人全員の署名や押印が必要な「遺産分割協議書」には、配偶者が建物について配偶者居住権を取得する点を書くだけでなく、次の点も書いておくことをおすすめします。

  1. 建物所有者には配偶者居住権の登記手続きに協力する義務があること
  2. 建物所有者は配偶者居住権の登記をいつまでに申請するのか(期限を明確にする)
  3. 建物の固定資産税や修繕費等を配偶者が負担すること

このような点も遺産分割協議書に書いておけば、当事者で誤解が生じませんし、登記の期限を前もって決めておくことで「あとからやっぱり協力できない」ということも抑止できます。

遺言執行者に専門家を指定しておく

遺言書には、死後の手続きを委任する遺言執行者をあらかじめ指定しておくことができます。

この時、司法書士や弁護士などの相続の専門家を遺言執行者に指定しておけば、仮に建物所有者から登記の協力が得られなくても、遺言執行者から配偶者居住権の登記を申請することができます。

専門家に遺言執行者を依頼するのは費用が掛かりますが、その分、効果も絶大です。

「こん・さいとう司法書士事務所」が選ばれる理由

いかがでしょうか。配偶者居住権は令和2年から施行された比較的新しい制度です。

そのため、相続に不慣れな司法書士事務所では対応が難しい場合もあります。

「こん・さいとう司法書士事務所」に遺産分割協議書の作成を依頼・遺言執行者に指定することで上記のお悩みは解決

以上を踏まえまして、当事務所「こん・さいとう司法書士事務所」が、これまで多くの上記のようなお悩みをお持ちの皆様から、配偶者居住権に関する確実な相続手続きの依頼先に選ばれている理由を以下にお伝えします。

  • 当事務所の「公正証書遺言作成サポート」を利用し、当事務所を遺言執行者に指定した場合は、遺言書を保管し、毎年「財産目録」の無料アップデートや当事者の連絡先確認等を実施しています。
  • 一般的な司法書士ではなく「相続専門」であるため、相続に関連する裁判所に関する手続き(不在者財産管理人、失踪宣告、遺産分割の調停の申立、相続放棄、相続財産管理人の選任など)、遺言書の作成、遺言執行にも精通しているため安心感がある
  • 「相続専門」だからこそ、個別の事例に応じた的確なアドバイスを貰える
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ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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こん・さいとう司法書士事務所は、遺産相続の手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で20年以上に渡って運営、相続問題・相続に関連する業務に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。

  • 「配偶者居住権を登記しない」のは大変危険なことなのでやめたほうがいい
  • 配偶者居住権の登記に協力してもらえないときは、裁判しかない
  • 配偶者居住権の登記を確実にするためには相続の専門家の助けが必要

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