【司法書士監修】電車飛び込みの賠償金は相続放棄できるのか?

電車と遮断機
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もし家族が電車に飛び込み、賠償金を支払わなければならなくなった場合、その家族の相続人は、これを相続放棄できるのでしょうか?

賠償金の金額は高額と噂されることもあり、家族としては非常に心配になるかと思います。

このページでは、創業20年以上、地域随一の相続専門の司法書士事務所である当事務所が、実際の事案や裁判例をもとに、賠償金の相続放棄について、よくあるお悩みの解決法を解説します。

電車の飛び込みの賠償金も相続放棄はできます

まず、結論です。列車の飛び込みで発生した鉄道会社に対する損害賠償金も相続放棄はできます。

「飛び込み自殺による損害賠償金は相続放棄はできない」という噂は、おそらく破産法という法律によるものだと思います。破産法では次のように規定されています。

(免責許可の決定の効力等)
第253条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)

e-Gov法令検索 破産法

このように破産法では、免責が認められない「損賠賠償金」があります。そのため、相続放棄の場合も放棄が認められない可能性があるのでは?と誤解されるようです。

しかし、相続放棄にはそのような規定はありません。故人(被相続人)の債務はその性質・内容は関係なく相続放棄ができます。

ただし、相続放棄には問題もありますので、その点も含めて順を追って解説していきます。

電車の飛び込みによる賠償金の実際について

家族・相続人として気になるのは、実際の賠償額です。事故を起こした場合、鉄道会社が被る損害額として考えられるのは、主に次の3つです。

  1. 乗客の振替輸送費
  2. 電車や線路・踏切の破損の修理費用
  3. これらにかかる人件費

この3つを合計すると、鉄道会社が受ける損害は数千万円単位になることもあるかもしれませんが、実際に遺族に請求されるのは数百万円~1,000万円程度が相場のようです。

くわしくは「鉄道事故|自死遺族支援弁護団」のホームページに記載がありましたので、そちらを参照していただければ理解できるかと思います。

なお、この後説明する「JR東海認知症事故訴訟」の裁判では、約720万円の損賠賠償が遺族に対して請求されました。

電車の飛び込みによる賠償金は裁判になることはほとんどない

上で説明したように、実際に請求される賠償金の額は「思ったより少ないな」という印象ではないでしょうか?

では、この賠償金をめぐって、鉄道会社から裁判を起こされることはあるのでしょうか?

遺族としては「家族が自殺した」というだけでも複雑な思いであるのに、裁判に巻き込まれるとなると、その精神的な負担は計り知れないものになるでしょう。

そこで、電車の飛び込みによる人身事故の損害賠償を争う過去の裁判例を検索してみると、現在のところほぼ実例がありません。ということは、示談、あるいは、相続放棄となっているのではないかと推測できます。

先ほど例に出した「JR東海認知症事故訴訟」の裁判が、具体的な損害額が示された代表例と言えそうですが、この裁判も損額額を争ったというより「認知症の家族を監督する義務があるのは誰なのか?」が争点となったものでした。

この事案は、認知症の者が線路に立ち入り、電車にはねられ死亡し、鉄道会社に損害を与えたという事例です。この場合の鉄道会社が被った損害を誰が負担するかは、民法714条に次のように規定されています。

第714条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
e-Gov 民法

誰が賠償責任を負うかというと、認知症の者(責任能力がない者)を「監督する義務のある者」です。

この裁判では「配偶者、後見人、同居していた長男」などは「監督する義務のある者」とは必ずしも言えず、監督義務を負うか否かは個別具体的に判断されるべきものだ、と判決が出されました。結局、JRは敗訴し、遺族は賠償金を支払わずに済んだという結末です。

もし電車の飛び込みによる損害金が発生したときの対応マニュアル

それでは、もし家族が電車に飛び込み、これにより鉄道会社に損害を与えた場合、あなたがその後どのようにすべきかを考えてみたいと思います。

事故発生後、鉄道会社や弁護士から賠償金について連絡がある

こちらから問い合わせをしなくとも、相手方から、賠償金についての連絡があります。事故発生からどれくらいで連絡があるかですが、先ほどの「JR東海認知症事故訴訟」の当事者でもある長男の方によると、半年後に鉄道会社から内容証明郵便が届いたということです。

この長男の方のインタビューでは「JR東海の担当者とはそれまで一度も会ったこともなく、その後は、家を仮差押えされるなど大変な思いをした|長男が語る「認知症鉄道事故裁判」|全日本民医連HPより抜粋」とあり、当事者としての生々しい発言がありますので是非お読みください。

故人の遺産から支払える金額であれば、そこから支払うように示談する

そこで、鉄道会社から請求された金額が、故人の遺産(預貯金など)から支払える金額であれば、そこから支払うように示談します。

もし故人の遺産から支払える金額でなくても、相続人側で支払う意思があれば、足りない部分は相続人で負担する形で示談することもできます。

払えるかどうかは故人の財産を調査しないと分かりませんよね。ですからこのような状況になったら他に借金がないかも含めて専門家に調査してもらった方がよいでしょう。

ちなみに、鉄道会社から請求された金額自体を争ってもあまり意味はないと思われます。鉄道会社としても根拠のある数字を提示しているわけですし、損害自体は明らかに生じているわけですから、後は「払えるか払えないか」の問題だけです。

故人の遺産から支払える金額でなければ、相続放棄する

鉄道会社から請求された損害賠償の金額が、故人の遺産をもってしても支払えない金額であれば、相続放棄をするという手段があります。

この後説明しますが、相続放棄は相続人が家庭裁判所で手続きをする必要があるので(相手方がやってくれるわけではありません)、その旨を鉄道会社に伝えておく必要があります。

また、相続放棄の手続きが完了した後も、その旨を鉄道会社に報告する必要があります。相続放棄の手続きをすれば、賠償金を相続人が支払う必要はなくなります。

しかし、相続放棄には問題もありますので、次にそれを説明します。

「相続を放棄する」としても慎重にやるべき理由とは?

これまで説明したように、たしかに相続放棄をすれば賠償金を支払う必要はなくなります。

ただし、相続放棄にはいろいろ注意しなければならないこともありますので、法律に詳しくない人が自分だけの判断でこれを行うのは大変危険です。必ず専門家に依頼すべきでしょう。

「相続を放棄する」と、他の財産も一切相続できなくなる

一番重要なのはこの点です。相続を放棄すると、賠償金などの債務を払わなくてよいことになるだけでなく、預貯金や不動産などもすべて相続できなくなります。

たとえば、自宅が故人の名義で登記されていた場合、家族はそこに住めなくなるということです。それでは大変困りますよね。

そこで、「賠償金だけ相続放棄して残りの財産は相続することはできないのか?」と思いますが、これはできません。

それを認める法律がないからです。

あなたが相続を放棄しても、他の相続人に相続権が移るだけ

たしかにあなたが相続を放棄すれば、あなたは賠償金を支払わずに済むかもしれません。

しかし、他に相続人となるべき人がいれば、その方に相続する権利が自動的に移り、身代わりになるだけとも言えます。

たとえば、夫が自死して、妻と子供が全員相続放棄の手続きをしたとします。そうしますと、法律により相続権は夫の兄弟に移ります(夫の両親はすでに死んでいたものとして)。

この場合、夫の兄弟も相続放棄の手続きを取ることはもちろんできますが、なかなかその説明も難しいかもしれません(だからこそ専門家に相談する必要があるのです)。

相続放棄は家庭裁判所で手続きをする必要があります

相続放棄は「放棄します」と言うだけではダメで、家庭裁判所に相続放棄の申述(一定の書類の提出)をしなければなりません。

相続放棄の詳しい手続きについては、当事務所の別のページにありますので、是非参考にしていただければと思います。

相続放棄は3か月以内と期限があります

相続放棄は、相続の開始を知ってから3か月以内という期限があります。これを法律上は「熟慮期間」と言います。

「相続の開始を知ってから」というのは具体的には、「自分が相続人となることを知った時から」という意味で、通常は「亡くなった時から」となります。

ただし、法律上の解釈は少し難しくて「相続財産(プラス財産やマイナス財産)を認識したときから」と考えることもできる場合もあり、事例により個別に検討が必要なところです。

上で説明したように、鉄道会社から賠償金の通知が来るのは「半年後」というケースもあるため、すでに死亡から3か月経過していることも少なくないでしょう。

ですから、事故が発生して損害賠償がされそうだなと思ったら、あらかじめ家庭裁判所に「期限の伸長の申出」をするという方法もあります。

これは「3か月」という制限を先延ばしにしてもらうという手続きです。特別な事情があれば再延長も可能ですから、相続放棄対策としてはかなり有効な手段です。

ちなみに、鉄道会社からまだ賠償請求の連絡が来ていなくて、具体的な賠償金額が分からなくても、相続放棄の手続きはできますので、必ずしも請求を待つ必要はありません。

死亡後に財産を使っていると相続放棄できなくなる

事故があり死亡した後に、例えば故人の預金を引き出して何かに使っていたりすると、法律上これを「単純承認」といって、相続放棄できない状態になってしまいます。

「単純承認」というのは、「相続を承認した」という意味で、文字通り「相続を認めた」ことになりますから、今後相続の放棄の手続きは不可能となるわけです。

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私たちは、相続放棄をはじめとする遺産相続の手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で20年以上に渡って運営、相続問題・相続に関連する業務に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。

  • 電車の飛び込み事故による賠償金も相続放棄ができる
  • 賠償金について裁判になることはほとんどない
  • 相続放棄をする場合は他の遺産もすべて失うので慎重に

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