【司法書士監修】県外の戸籍謄本の取り寄せが広域交付で簡単に
「相続手続きに必要な戸籍謄本を一か所の窓口でまとめて取得するには?」「相続の手続きがしたいけど本籍地が遠方だから取り寄せる方法が分からない」は、当事務所に多い相談・質問の一つです。あなたも同じ悩みを持っていますか?
令和6年3月1日から改正戸籍法が施行されました。
これまでは本籍地が遠方の場合、その市区町村へ戸籍証明書等を請求する必要がありました。しかし、今後は最寄りの市区町村の窓口で請求することができます(この制度を「戸籍証明書等の広域交付」と言います)。
今回このページでは創業20年以上、地域随一の相続専門の司法書士事務所が「【司法書士監修】県外の戸籍謄本の取り寄せが広域交付で簡単に」と題して、今まさに相続問題でお困りのあなたの疑問にお答えします。
このページを見れば『現時点で最新・相続手続きに必要な戸籍謄本の集め方』や『広域交付以外の方法を使った戸籍謄本の取り寄せ方法』について具体的な対策・対処方法や注意点ついて、これまでの疑問点がスッキリ解決すると思います。
このページは相続に関する戸籍謄本の取り寄せ方法について様々なサイトを検索・アクセス、調査し、不安になっているすべての相続人・その家族に向けたものです。ご参考になれば幸いです。
県外の戸籍謄本の取り寄せが簡単になった「広域交付」の新制度
冒頭でお伝えしたように、令和6年3月1日から改正戸籍法が施行されています。これによって本籍地以外の市区町村の役場・役所の窓口以外でも戸籍謄本(戸籍証明)や除籍証明書(除籍謄本)を取得できるようになりました。
いままでは、本籍地が遠方である場合は、直接本籍地の役場の窓口まで出向くか、郵送で戸籍謄本を取得していたのですが、現在はその必要はなくなりました。
広域交付の制度によって、今後、戸籍謄本の取得方法は次のように変わります。
どこでも戸籍謄本を取得できる
本籍地が遠くにある場合でも、自宅や勤務先の最寄りの市区町村の窓口で戸籍謄本を取得することができます。わざわざ本籍地まで出向いたり、郵送請求の手続きを行うことは不要です。
請求の手続きをする役所の選び方ですが、特にありません。あなたにとって都合がよければどの役所でも一緒です。
まとめて1か所で複数の戸籍謄本を請求できる
ほしい戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の市区町村の窓口でまとめて請求できます。
これまでは各本籍地の窓口それぞれで戸籍謄本を発行してもらう必要がありました。直接窓口まで出向いたり、郵送請求の方法をいちいち取っていたわけですが、今後はその必要はありません。1つの窓口でまとめて発行してもらうことが可能です。
例えば、相続が発生して「被相続人(亡くなった人)の死亡から出生までを遡る戸籍謄本をすべて集めたい」というケースでは非常に便利な制度となるでしょう。ただし万能とは言えませんので、注意点については次の項目で説明します。
なお「相続手続き(名義変更)で必要な戸籍謄本は何ですか?」というお問い合わせがよくありますので、当事務所の別の記事で詳しく解説しました。こちらのページを読めば、疑問は解決します。
「広域交付」制度を使った<これからの戸籍謄本の新しい集め方>
新しく始まった「広域交付」制度を使えば、これまで相続手続きで面倒だった戸籍謄本の収集が、法律知識のない一般の方にも行いやすく簡単になったと言えます。デメリットは特にありません。
ただし、注意すべき点もありますので、ここでは広域制度を使った戸籍謄本・戸籍証明書等の集め方のポイントを解説します。
発行手数料は通常の手数料より高くなる役所も
広域交付制度を使って県外の戸籍謄本を発行してもらったり、複数の本籍地の戸籍謄本をまとめて発行してもらうと、その分、利用手数料は高くなるのでしょうか。
主な戸籍書類の発行手数料はおおむね以下の一覧の料金になっています。
発行してもらえる証明書 | 1通の手数料 |
戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本) | 450円 |
除籍の全部事項証明書(除籍謄本) | 750円 |
除籍の全部事項証明書(除籍謄本) | 750円 |
広域交付により戸籍書類を請求する場合も、基本的にはこれと同じ金額の役所が多いです。しかし、数百円高い料金を設定している役所もあります。例えば、東京都千代田区役所は次のような料金を設定しています。
発行してもらえる証明書 | 1通の手数料(区民の方) | 1通の手数料(区民以外の方) |
戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本) | 450円 | 600円 |
除籍の全部事項証明書(除籍謄本) | 750円 | 1,000円 |
除籍の全部事項証明書(除籍謄本) | 750円 | 1,000円 |
千代田区民以外の方が、千代田区役所の窓口で戸籍書類を請求すると料金が通常より高くなるという設定のようですね。
なお表に「戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本)」とありまして、「戸籍の全部事項証明書」と「戸籍謄本」はどう違うのかという疑問があるかと思います。これは次のように違いがあります。
- 戸籍の全部事項証明書→コンピュータ化されたもの。横書きで作成されている。
- 戸籍謄本→コンピュータ化されておらず、紙で管理されており、縦書きの手書きで作成されている。
この違いは「除籍の全部事項証明書」と「除籍謄本」も同じです。
用紙(請求書)は役所のホームページからダウンロード可能
広域交付によって県外の戸籍謄本を請求するような場合は、広域交付用の請求用紙が窓口に備え付けてありますのでそれに記入します。事前に書いて準備したい方は、各役所のホームページからダウンロード・印刷をしてください。
記入事項は、取得したい戸籍の本籍地と筆頭者や生年月日、窓口に来た人の氏名・住所・電話番号などです。押印は不要です。参考までに東京都練馬区役所の申請書のダウンロードのページのリンクを貼ります。
コンピュータ化されていないものなど発行不可の書類もある
広域交付制度を利用して窓口で戸籍を請求しても、コンピュータ化されていない戸籍謄本や除籍謄本・改製原戸籍謄本など、一部の書類は発行してもらえないことがあります。
特に昔の戸籍(除籍謄本・改製原戸籍)は、今でもコンピュータ化されていないものが多く存在します。
ここで言う「コンピュータ化」というのは「電子情報として保存・保管されている戸籍」という意味です。
縦書きの手書きで作成されている昔の戸籍であっても、すでに電子情報として管理されているものもあります。こういったものは役所が管理している戸籍簿からいちいちコピーして戸籍謄本を交付するわけではなく、PCからデータを読みだしてプリントアウトするだけです。
ですからそのような「電子情報として保存されている戸籍」であれば広域交付制度によりどの窓口でも発行可能です。
しかし戸籍簿からコピーして戸籍謄本を作成するようなものについては、その役所でしか発行してもらうことはできません。
<発行してもらえない戸籍関係の書類をまとめると次のようになります>
- コンピュータ化されていない戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 戸籍・除籍の個人事項証明書や一部事項証明書(全部事項証明以外のもの)
- 戸籍の附票(住所の変遷を証するもの)
請求できる方と請求できる範囲・対象には一定の制限がある
広域制度を使って戸籍謄本を集めたいとなった場合、取得請求できるのは本人の戸籍謄本だけではありません。たとえば本人からみて次の方の戸籍謄本を請求することもできます。
- 配偶者(夫からみて妻・妻からみて夫のもの)
- 父母・祖父母・曽祖父母(直系尊属|親やその上の親のもの)
- 子・孫・ひ孫(直系卑属|子やその下の子のもの)
このように本人の戸籍だけでなく、自分の父母や子どもの戸籍も請求することができます。
例えば、本人の父親が死亡して相続が開始したというケースでは、本人の戸籍謄本を請求できるだけでなく、死亡した父について死亡の記載のある除籍謄本から、父の出生に遡る除籍謄本・改正原戸籍謄本も請求できることになります。
なお、本人からみて次の方の戸籍に関する書類は請求できません。
- 兄弟姉妹(結婚等によって父母の戸籍から除籍している場合)
- 叔父・叔母(結婚等によって祖父母の戸籍から除籍している場合)
- 甥(おい)・姪(めい)
この様な人も法定の相続人になる場合がありますが、広域制度を使って戸籍謄本を請求することはできませんので、他の方法で請求することになります。広域交付では、相続人だからといって親族の戸籍なら誰のものでも請求できるというわけではありません。
必ず本人が市区町村の窓口で手続きをする必要がある
広域交付制度を使って戸籍の書類を請求するときは、必ず請求する本人が窓口で手続きする必要があります。
たとえば、本人が忙しいので、本人の代理人として本人の配偶者が窓口で手続きをするということは、たとえ委任状があったとしても認められません(委任状による代理請求)。
また、直接窓口に出向けないからといって、その窓口に対して郵送請求によることもできません。
なお、一般の方にはあまり関係ないかもしれませんが、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などの専門家は広域交付制度を利用することはできません。
窓口で必要な本人確認書類はかならず「写真付き」のもの
窓口で広域交付制度を使って戸籍の請求をするときは、窓口で氏名や住所が記載された本人確認書類を提示する必要があります。本人確認書類は必ず写真付きのものとされていて、例えば次のようなものがあります。
<写真付きの本人確認書類>
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 写真付き住基カード
- パスポート
- 特別永住者証明書
- 在留カード
- 官公署発行の身分証明書(写真付)
保険証や年金手帳、勤務先の身分証では認められませんので注意が必要です。
窓口で数時間待たされたり、当日交付が受けられないケースも…
自治体によって異なるようですが、相続で使用する過去の戸籍をまとめて請求するような場合は、窓口で2~3時間待たされたり、当日の交付が受けられないケースもあるようです。
その理由は、国からの通知により、窓口の職員がすべての本籍地で電話確認をするという「暫定運用(令和6年3月1日より当面の間)」をしなければならないということのようです。
参考までに千代田市役所のホームページには以下のような記載がありました。
- 暫定運用期間中は、国からの通知により、請求された戸籍(除籍)の内容について、本籍地への電話確認をすることとされています。そのため、相続で遡りの戸籍をご請求される場合など複数の本籍地の戸籍(除籍)をご請求の場合は、職員がすべての本籍地へ電話確認する必要があります。そのため、請求から交付までに長時間お待たせすることが想定されます。あらかじめご了承ください。
- (千代田区ホームページ-広域交付)
また、事前の予約が必要な役所もありますので、あらかじめ電話問い合わせの上、窓口に行くことが重要でしょう。
その他の戸籍書類の集め方もある|組み合わせて収集するのがポイント
広域交付の制度は便利ですが、この制度によっても集めることのできない戸籍もあります。
また、広域制度以外の戸籍の集め方というのもありますので、以下ではその方法を解説します。
一般的にはどれか一つの方法を使ってすべての戸籍を集めるというのではなく、複数の方法を組み合わせてすべての戸籍を集めるといったやりかたをします。
たとえば、複雑な相続手続きにおいては事例によって50~100通の戸籍謄本を集めることもありますので、特に私たちのような専門家は、なるべく費用が掛からないようにするなども考慮した上で複数の方法を組み合わせてなるべく短期間ですべての戸籍書類を収集するように心がけています。
本籍地へ郵送請求するという方法は手間はかかるが確実
全国のどの役所においても、直接窓口に出向かなくても、郵便の方法によって戸籍書類を請求することができます。記入の仕方・やり方については、各自治体のホームページを見ていただくのが早いと思います。用紙なども各自治体のホームページからダウンロードできるようになっています。
費用は郵便小為替を同封し支払います。後払いではなく、発行と同時払いと言いますか、請求用紙や必要書類と合わせて郵便小為替を同封しますので、この点はご注意ください。
また、切手を貼った返信用の封筒(または購入したレターパック)も同封するようにしてください。
そのほか、たとえば相続手続きにおいて、遠い親戚の戸籍謄本を請求するような場合は、用紙にその旨を記載したり、相続関係を証明できるような他の戸籍謄本のコピーを同封するなどの工夫をしないと「発行できませんでした」と返送されてしまう可能性もあります。記入漏れも絶対に無いように気を付けなければなりません。
そのような意味では専門家に任せた方が良い場合もあります。
コンビニでも取れるが自分の戸籍謄本程度
コンビニエンスストアのマルチコピー機で戸籍謄本(全部事項証明書・個人事項証明書)を取得することもできます。戸籍謄本以外にも住民票・印鑑証明書・戸籍の附票も発行が可能です。
お住まいの市区町村と本籍地の市区町村が異なる方は、事前に別途の申請手続きが必要となり手間がかかりますので、わざわざコンビニで取得するメリットはないような気がします。
なお、マイナンバーカードを使っての操作となりますので、マイナンバーカードを忘れずに用意してください。
コンビニで取得できるのは申請者本人のものに限られます。自分の戸籍書類だけ必要であれば、非常に便利な方法です。コンビニでの取得のやり方については以下にリンクを貼っておきますので参考にしてください。
〇コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付【コンビニ交付】 | 本籍地の戸籍証明書取得方法 (lg-waps.go.jp)
現在の戸籍謄本(戸籍事項全部証明書)や印鑑証明書は、相続手続きにおいては期限があるケースが多いので、コンビニのマルチコピー機で発行できるのは便利ですね。
特定の郵便局の窓口で戸籍謄本がとれることも
全国どこの郵便局というわけではなく、特定の郵便局で戸籍謄本を取得することもできます。
たとえば東京都練馬区の場合は、区内の11か所の郵便局で戸籍謄本などの書類を発行してもらえるようです。参考までにリンクを貼っておきます。
〇区内11カ所の郵便局で住民票の写しなどの証明書発行を行っています:練馬区公式ホームページ (city.nerima.tokyo.jp)
ただし、発行可能なのは請求者本人の書類に限られますので、相続で必要な被相続人の死亡から出生に遡る戸籍を郵便局で集めることはできません。代理人が本人に代わって請求することもできません。
また、郵便局で発行が受けられる書類は自治体ごとに取り扱いが異なりますので、各自治体のホームページを検索してみてください。「〇〇市役所・戸籍謄本・郵便局」などのキーワードで検索すると該当のページが見つかりやすいと思います。
今回調べてみたところ次の書類はおおむね発行ができるようです。
- 戸籍全部事項証明(戸籍謄本)、戸籍個人事項証明(戸籍抄本)
- 戸籍の附票
- 住民票
- 印鑑証明書
除籍謄本や改製原戸籍謄本については自治体によって取り扱いが異なります。
結論|広域交付制度を使って自分で集めてみる。不足分は専門家に頼む。
以上のように、広域交付制度を使えば簡単に県外の戸籍謄本を集めることができることがご理解いただけたかと思います。
特に相続手続きではたくさんの戸籍謄本を集める必要がありますので、まずは広域交付制度を使って、被相続人の死亡から出生に遡る戸籍を可能な限り集めてみましょう。
今までは難しい作業でしたが、広域交付制度により一般の方でも簡単にできるようになりました。これによる手続き費用の節約は、取得すべき戸籍謄本の数が増えれば増えるほど大きくなります。
ただし、必ずしも広域交付制度によって相続手続きに必要な戸籍を完全に集めることはできないので、不足分についてだけ専門家に依頼するという流れが一番スムーズであり、今後のスタンダードになるような気がしています。
いずれにしても、まずは、専門知識を持った相続専門の司法書士や税理士、弁護士(法律事務所)に相談されることをご検討ください。どの方法がおすすめというものではないので、それぞれの特徴を理解した上で、状況や経過に即したアドバイスが必要となります。
最後に|いまなら無料相談が受けられます
私たちは、遺産整理業務をはじめとする遺産相続の手続き専門の司法書士事務所です。登記だけでなく、遺言や相続放棄などのお手続きも扱っています。東京国分寺で20年以上に渡って運営、相続問題・相続に関連する業務に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでは、「【司法書士監修】県外の戸籍謄本の取り寄せが広域交付で簡単に」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。
このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。
- 令和6年3月1日から戸籍の証明書の請求が便利になりました(広域交付)
- 本籍地が遠方でも最寄りの役所の窓口で複数の戸籍をまとめて請求できます
- 広域交付の方法でも全員分の戸籍が揃うとは限りません
相続手続きの第一歩は、相続手続きに必要な戸籍の証明書を正確にすべて集めることです。
いままでは、この作業は一般の方には難しかったのですが、広域交付の制度によって、だいぶ負担が軽くなりました。
ただし、広域交付によっても完全に戸籍の証明書を集めることができないケースもあり、やはり個人の力では限界があるかもしれません。
ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用・連絡いただければと思います。
専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。また相続に関連する問題・相続税の申告に強い提携の税理士や弁護士もおりますので、全方向のサービス・サポート・代行・紹介が可能です。
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