【司法書士監修】相続人や被相続人の債権者からの差押|具体的な解決方法とは
「相続が発生して被相続人に債務が有る場合、遺産は差し押さえされるのか?」「遺産を相続しても相続人の債権者から遺産を差し押さえられてしまうのは本当か?」は、当事務所に多い相談の一つです。あなたも同じ悩みを持っていますか?
亡くなった方に借金や税金の滞納があった場合、相続人はどのようにすればよいのでしょうか。また、相続人自身に借金や税金の滞納がある場合、差押えとの関係で遺産を相続する際は、何に気を付ければよいのでしょうか。
今回このページでは創業20年、地域随一の相続専門の司法書士事務所が「【司法書士監修】相続人や被相続人の債権者からの差押|具体的な解決方法とは」と題して、今まさに相続問題でお困りのあなたの疑問にお答えします。
このページを見れば『被相続人に債務が有る場合の差押えの問題』や『相続人に債務が有る場合の差押えの問題』について具体的な対策・対処方法や注意点ついて、これまでの疑問点がスッキリ解決すると思います。
このページは相続人と差押に関する法律問題で様々なサイトを検索・アクセス、調査し、不安になっているすべての相続人・その家族に向けたものです。ご参考になれば幸いです。
被相続人に債務が有る場合は実務上、このような取り扱いになる
被相続人(死亡した故人)に借金や税金の滞納分があった場合、実務的には以下のように処理されています。
金融機関からの借入は「遺産分割協議」を経て「債務引受契約」により特定の相続人が承継
住宅ローンなどの一般的な金銭の借入による債務を相続する場合、法律上は相続人が法定相続分に応じて債務を引き継ぐことが原則です。民法の第902条の2が適用されます。
(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)第九百二条の二 被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
しかし、そのようにすると権利関係が複雑になってしまうため、実務上は相続人全員の遺産分割協議で債務を承継する方を決定して、その後、金融機関と承継人の間で債務引受契約を締結します。
このようにすると、他の相続人は債務を全く負担しなくなります。もちろん、債務を引き受けた相続人が支払いを続けていけば差し押さえなどもされることはありません。
団体信用生命保険に加入している住宅ローンは保険金で完済されて債務は引き継がない
住宅ローンによる借り入れは一部を除いてほとんどの場合、団体信用生命保険に加入しています。ローンを組んだ債務者が死亡しますと、保険会社から保険金が支払われて、残債に充当され、住宅ローンは完済となります。
もちろん抵当権も消滅します(ただし抵当権消滅の登記は別途必要となります)。
そのため、債務が相続人に承継されることはありません。
その他の一般的な債務や税金の未払い分は「遺産分割協議」で特定の相続人が承継
その他の一般的な債務とは一覧にすると次のようなものです。
- 個人からの借金
- 電気料金や水道料金、携帯電話料金などの公共料金の未払い分
- 医療費の未払い分
- 国税、固定資産税や住民税などの未払い分
この様な債務も法律上は上で説明したように「債務引受契約」を債権者と締結するべきなのですが、相続人がすぐに支払うという前提であれば、それを考慮し、遺産分割協議で相続人の中から債務を承継する者を決めて、その相続人が支払いを済ませるという方法が一般的です。
その理由は、すぐに完済するのに、債権者(相続人ではない第三者)との間でいちいち「債務引受契約」をするのが面倒なためです。
なお、税金の未払い分の徴収についての差押えのことを「滞納処分による差押」と言いますが、通常の「差押」と同様にお考え下さい。
被相続人に債務が有り、支払いの見通しが立たないと差押えになる
相続が発生して、被相続人の遺産を誰がどのように取得するかを決める話し合いのことを「遺産分割協議」と言います。上で説明したように、債務を誰が相続するか決めて、債権者もその旨を承諾して、支払いも滞っていなければ差押えになることはありません。
しかし、いつまでも遺産分割協議がされず、債務引受契約もされない状態が続くと、相続財産に対して差押えを受けることになります(その前に支払いを求める通知はかならず来ます)。
債権者が差押えをするためには、「判決」を代表とするような差押えを認める前提となる書類が必要となります。単に契約書があって、支払いが滞っているだけでは差押えはできません。
債権者が遺産の中から具体的に何を差し押さえるのかは債権者の判断となります。故人名義の土地や建物、故人名義の預金・貯金など、相当の財産が考えられます。
差押えが認められれば、裁判所は、差押に基づく強制執行を対象の財産に行っていきます。
被相続人の債権者が不動産を差し押さえる場合は、相続登記は債権者側で行われることも
被相続人の債権者が、被相続人名義の不動産を差し押さえて競売する場合、まず前提として相続人名義への変更登記(相続登記と言います)がされている必要があります。
差押する時点でまだ相続登記が終わっていない場合は、債権者が相続人に替わって相続登記を行うことが手続き上可能です。
被相続人の債権者から遺産の差押えを防ぐ方法とは…
差押えを避けるためには、未払いの債務を弁済、未払いの税金を納付することです。
そもそも遺産分割協議が済んでいないのであれば、相続人の中から債務を承継する者を決めて、速やかに完済する以外に方法はありません。
被相続人の債務をそもそも引き継ぎたくない場合は「相続放棄」が一般的
故人に大した遺産はなく、多額の債務があるのみ、というケースでは、そもそも相続に関わりたくないと考える方がほとんどです。この様な場合には「相続放棄」という選択肢があります。相続人が各自単独でできます。
「相続放棄」をすると、相続とは無関係になりますので、被相続人の債務を負担することは一切ありません。しかし、その代わり、遺産についての権利をすべて放棄することになるため、預金や不動産などのプラス財産の権利も完全に失います。
また「相続放棄」は原則として死亡後3か月以内に限られます(3か月以内に裁判所へ一定の書類を提出する必要があるという意味です)。
すでに時間が経過している場合は、そもそもこの手続きはできないことになります。また、すでに遺産を処分しているような場合も、相続を認めることになるため、もはや放棄は禁止される取扱いです。
相続放棄の流れや詳しい説明は別のページにまとめてありますので、参考にしてください。
被相続人の債務は承継したくないが預金や不動産は相続したい場合は「限定承認」
上記で説明したように、被相続人の債務を引き継ぎたくない場合は「相続放棄」をすれば良いのですが、「相続放棄」をすると遺産を完全に失うことになるため、何か他に方法はないか?と必ず質問を受けます。
その際にできる手続きとしては法律上「限定承認」という手続きがあります。一般的には、故人の債務とプラス財産の金額を比べて、どっちが多いか不明な場合に行う手続きと言われています。
これは相続人が故人の債務を引き継ぐのではなく、故人の遺産を換価して、その中から債務を弁済して、もし余った遺産があったらそれを相続できるという制度です。
逆に故人の遺産をもってしても債務を完済できなくても手続き的にはそこで終了となり、相続人が債務を引き継ぐこともありません。
便利な制度に見えますが、つぎのようなデメリットがあります。
- 時間がかかる(事例にもよるがおよそ1年程度)
- 費用がかかる(弁護士や司法書士に依頼することが前提で最低でも数十万~かかる)
- 相続人が数人いて共有となる場合は必ず全員の同意が必要(自分一人ではできない)
ということで、ここ数年の家庭裁判所の統計をみても、現在は限定承認を選択する方はほとんどいないのが現状です。
限定承認に関する詳しい説明は別の記事にありますので、参考にしてください。
被相続人に債務がなくても相続人にあれば差押になることも
これまで説明したのは「被相続人(故人)」に債務があった場合の話です。しかし、それとは異なり、被相続人に債務がなくても、相続人の方に債務があれば、遺産が差し押さえられることがあります。
例えば死亡した父に借金がなくても、その子供に借金があれば、遺産が差し押さえられてしまう可能性があるという話です。
この場合、子どもの債権者(銀行や税金を滞納している場合は自治体など種類を問いません)は、債務の弁済が滞り、子どもに固有の財産があれば通常そちらを差し押さえます。
しかし、これといった財産がないという場合は、父死亡によって子供が相続する遺産を差し押さえることができます。差し押さえることができる財産には制限はなく、不動産や預貯金などがあります。
相続人の債権者が不動産を差し押さえる場合は、相続登記は債権者側で行われることも
相続人の債権者が、被相続人名義の不動産を差し押さえて競売する場合、まず前提として相続人名義への変更登記(相続登記と言います)がされている必要があります。
差押する時点でまだ相続登記が終わっていない場合は、債権者が相続人に替わって相続登記を行うことが手続き上可能です。この時は、法定相続分の割合で相続登記がされ「債務がある相続人の持分」を目的として差押の登記がされます
相続人の債権者から遺産の差押えを防ぐ方法とは…
差押えを避けるためには、未払いの債務を弁済することは当然ですが、その他にも方法はあります。それは、遺産分割協議や遺言書の確認を急いでやって、すぐに相続登記をしてしまうことです。
例えば相続人である子が2名(AとB)いて、Aのみが借金を負っているというケース。この場合、遺産をすべてBが相続するという遺産分割協議をして、不動産については相続登記もすませ、預金も解約しBの口座に移管するのです。
そうすれば、Aは何も相続しなかったわけですから、依然としてAには財産はなく、何も差し押さえるものがないことになります。重要なのは、債権者が差押えをしてくる前にこれらをすべて済ませておくということです。
特に不動産については、相続登記よりも先に差押えの登記がされてしまうと、差押えの方が優先されてしますので、勝負に例えるなら「負け」となります。
なお、上の同じ事例で、仮に遺言書に「Bに相続させる」と書いてあったとしても、当然にBの権利が確保されるわけではなく、差押えがされるよりも前に、不動産については相続登記を済ませておかないと、Aの法定相続分の範囲については債権者にとられて競売されてしまいます。この点は近年の民法の改正で変更された点です。
結論|遺産に差押えがされそうな場合どうすれば…
以上のように、相続財産が差し押さえられるケースは各種・いろいろとあることがわかります。
そして、差押えを回避させるためには、事例にあった方法・手続きを取らなければなりません。
たとえば、そもそも被相続人の遺産に関わりたくない場合は、相続放棄を検討すべきですし、もし遺産を相続するのであれば、債務をだれが負担すべきか遺産分割協議を検討するといった具合です。
また、相続人が債務を負っている場合は、差押えを避けるために、遺産分割協議や相続登記は一刻を争う話となってきます。
いずれにしても、まずは、専門知識を持った相続専門の司法書士や税理士、弁護士(法律事務所)にご相談されることをお勧めします。どの方法がおすすめというものではないので、それぞれの特徴を理解した上で、状況や経過に即したアドバイスが必要となります。
最後に|いまなら無料相談が受けられます
私たちは、遺産相続の手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で20年以上に渡って相続問題・相続に関連する業務に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでは、「【司法書士監修】相続人や被相続人の債権者からの差押|具体的な解決方法とは」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。
このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。
- 被相続人に債務が有れば遺産が差し押さえられることはある
- 被相続人に債務がなくても相続人にあれば遺産が差し押さえられることはある
- どちらのケースも遺産分割協議や相続手続きはスピーディーに済ませる必要がある
本ページで説明した遺産分割協議(遺産分割協議書の作成)の手続きや、その後の相続手続き(預貯金の解約や相続登記)、そして死亡後3か月以内とされている相続放棄や限定承認を速やかに行うためには専門的な知識が必須となります。
個人の力では限界があるかもしれません。
ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。
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