【司法書士監修】遺言書を見つけて勝手に開けると?開封マニュアル大全
「遺言書を見つけたが開封して良いか?」「すでに封が開いている遺言書はどうすれば良いか?」は、当事務所に多い相談の一つです。あなたも同じ悩みを持っていますか?
手書きで書かれた遺言書や、公証役場で作成された遺言書、いろいろな形式の遺言書がありますが、相続が開始して遺言書を発見した相続人は、まず最初にどうすれば良いのでしょうか。
このページでは創業20年、地域随一の相続専門の司法書士事務所が「【司法書士監修】遺言書を見つけて勝手に開けると?開封マニュアル大全」と題して、今まさに相続問題でお困りのあなたの疑問にお答えします。
このページを見れば『封のされた(または封のされていない)手書きの遺言書を発見した場合』『封のされた(またはされていない)公正証書の遺言書を発見した場合』の具体的な対策や注意点ついて、これまでの疑問点がスッキリ解決すると思います。
このページは「遺言書・開封」などのキーワードで様々なサイトを検索・調査し、不安になっているすべての相続人・その家族に向けたものです。ご参考になれば幸いです。
遺言書を見つけたら開封して良いかはどのような遺言書かによる
まずは始めに、封のされた遺言書を発見した場合の対処法です。
「封のされた」とは、明らかに糊で封が貼られていたり、テープ等で封が開かないようにされている状態のことを言います。
この様に封のされた遺言書を勝手に開封して良いかどうかは、その遺言書がどのような遺言書かによって結論が異なります。
自筆証書遺言は勝手に開封できない
封筒の様子から判断して、明らかに手書きと思われる遺言書(これを法律上は「自筆証書遺言」と言います)であれば、この後説明するように裁判所において、裁判官に開封してもらう必要がありますので、自分自身で勝手に開封することはできません。
一般的に、自筆証書遺言は市販の封筒や、書店などで販売されている「遺言書キット」の封筒に収められているものが多いです。
市販の封筒であれば封筒の表面または裏面に、手書きで「遺書」「遺言書」「覚書」「重要書類」「●●(相続人のお名前)へ」などと書かれていたりします。
「遺言書キット」であれば、付属の封筒の表面に「遺言書」と印刷してあります。
なお、自筆証書遺言であっても法務局保管制度を利用して、原本を法務局に預けている場合は、その原本の開封は問題となりません。法務局へ行って、遺言書情報証明書を発行してもらう様にして下さい。
公正証書遺言はどうぞ開封してください
封筒の様子から判断して、明らかに公証役場で作成されたと思われる遺言書(これを法律上は「公正証書遺言」と言います)であれば、勝手に開封しても法律上何の問題もありません。
公正証書遺言(正本または謄本)は、それが作成された公証役場の封筒に入っていることが多いです。封はされていることもあれば、されていないこともあります。もし封がされていても、自筆証書遺言のように裁判所で裁判官に開封してもらう必要はないので、直ちに開封しても大丈夫です。
開封に際して公証人へ連絡したり、同意を得る必要もありません。
遺言書の形式には他にも秘密証書遺言や死亡危急時遺言などさまざまな種類が存在しますが、あまり一般的ではありませんので、今回こちらのページではその違いなどの説明は割愛させていただきます。
発見した自筆証書遺言の封がすでに開いていたら何か問題?
実は当事務所に持ち込まれる自筆証書遺言の半数以上は、発見した当時から封がすでに開いている状態のものです。つまり、封筒には入れられているけれども、最初から封はされていない状態ということです。
もちろんはじめから封が開いていたのであれば、何も問題はありません。しかし、発見された遺言書は、封に入れた状態で裁判所に提出(この後に説明する「検認」手続き)する必要がありますので、封は捨てないようにしてください。
なお、そもそも封筒に入っていなかったら、それで構いませんので、わざわざ封筒を探す必要はありません。
遺言書をうっかり開封してしまったらどうなるのか?
遺言書は、遺言書を書いた人の最終の意思が書いてあるものと法律上は理解されています。遺言者の相続財産の処分方法、相続や遺贈の方法など重要な事項が書かれているため、その内容が後日に第三者によって書き換えられたりすることを防ぐことが大切です。
遺言書を勝手に開封すると5万円以下の過料の罰則がある
そこで、民法という法律では、遺言書の検認・開封の手続きを設けています。それは次のような規定です。
(遺言書の検認)第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
要約すると「封印のある遺言書は家庭裁判所で開封する必要がある」ということです。もし勝手に開封してしまった場合には、罰則規定が次のように定められています。
(過料)第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
遺言書をうっかり開封しても実際には何もないことがほとんど
上で説明したように、法律上は、遺言書を裁判所外で開封すると5万円以下の過料となるものの、実際に過料になるということはほとんどありません。
もちろん、遺言書が法的に無効になることもありません。
しかし、たとえば、相続人同士で遺言書の有効・無効を争うような裁判をして、その裁判の中で、もし遺言書を勝手に開封したことが問題となれば、その相続人に遺言書の偽造や変造の疑いがかけられて裁判上不利になったり、そこで初めて過料の問題が出てくることはあるかもしれません。
そのようなことがなければ、うっかり開封しても特段の問題は生じないということです(だからといって勝手に開封して良いというわけではありません)。
発見した自筆証書遺言は裁判所へ提出して「検認」を受けること
自筆証書遺言は、遺言書に封印がされている場合も、されていない場合も、開封されている場合も、されていない場合も、必ず家庭裁判所へ提出して「検認」の手続きをしなければなりません。
ただし、自筆証書遺言でも遺言書保管制度を利用している場合には、検認は不要です。また公正証書遺言も検認は必要ありません。
遺言書かどうか分からないものはどうするべきか
検認が必要な遺言書は、必ずしも「遺言書」という表題・タイトルの文書に限りません。「遺言状」「遺書」「覚書」「重要書類」などのようなタイトルであっても、およそ故人の遺志が記載されている文書であれば、検認の申立てが必要となります。
ですから、遺言書が2通以上の複数発見された場合には、そのすべてについて検認が必要となります。また、押印がされていないなど、明らかに方式違背があるような遺言書も検認が必要です。
また、偽造されたものであることが明白であっても、遺言者の名前が書いてある以上は、検認が必要となります。
実際、このあたり、どこまで検認の申立てを行うかは相続人や保管者に任されているような印象も否めませんが、撤回された遺言書や、内容が実体上無効とされる遺言書、内容が完全に一致する遺言書など、理論上はすべての遺言書について検認手続きが必要です。
自筆証書遺言の検認の申立て手続きは司法書士に依頼できる
検認の申立て手続きは、相続人が自ら行うことももちろんできます。しかし、内容によっては揃えるべき書類が多くなり、手続きも煩雑です。そのような場合、どの専門家に遺言書の検認の手続を依頼すればよいのでしょうか。
事例によっては始めから弁護士に依頼すべきケースもありますが、基本的には相続を専門に扱っているような司法書士事務所を探してみると宜しいかと思います。一般的には司法書士の方が弁護士よりも費用が安いためです。
しかし、明らかに遺言の無効・有効を争うような裁判をしなければならないようなケースにおいては、検認手続きも含めて弁護士に依頼した方が費用的には安く、簡単に済む可能性があります。
遺言書の検認の申立て手続きの概要
自筆証書遺言の検認手続きの概要は以下の表のとおりです。
申立人になれる人 | 相続人、遺言書の保管者 |
書類の提出先・管轄裁判所 | 被相続人の死亡当時の住所地を管轄する家庭裁判所 |
申立費用 | 収入印紙800円と事案に応じた郵便切手代(専門家に依頼する場合は別途費用がかかります) |
かかる日数 | 申立てをしてから約1~2か月程度が多い |
申立てに必要な書類 | ①申立書(相続人目録を含む) ②遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本全部 ③相続人・受遺者の戸籍謄本 ④遺言書原本 ⑤その他裁判所より指示のある書類 |
遺言書の検認手続きの実際の流れはこうなる
すでに説明したように、自筆証書遺言については遺言書が開封されている、されていないに関わらず、裁判所に提出して検認手続きが必要です。
封印された遺言書については、開封を裁判所で行うわけですが、「開封手続き」と「検認手続き」が別々の手続きとしてあるわけではなく、開封も含めて「検認手続き」1つとして行います。
検認手続きの実務上の流れは以下のようになります。
①家庭裁判所へ申立書の提出 | 申立人が書類一式を管轄の家庭裁判所へ提出します |
②相続人全員への通知 | 家庭裁判所から申立人をふくめた相続人全員へ検認期日の指定の通知があります。申立人は必ず出席しなければなりませんが、相続人の出席は自由です。 |
③検認期日の開催 | 封印された遺言書は検認期日に裁判官が開封します。遺言書原本は裁判官が出席者一人一人に見せて、筆跡や印影を確認します。検認期日は通常10~15分程度で終了します。終了後は、遺言書原本の末尾に「検認済み」の証明書が合綴されて、申立人に返却されます。 |
④欠席者や利害関係人への通知 | 家庭裁判所から、欠席した相続人や、遺言書の内容から新たに明らかになった利害関係人(受遺者や遺言で認知された者など)に、検認手続きが終了した旨の通知がされます。 |
「検認」は遺言書の有効や無効を主張する手続きではない
検認という手続きは、裁判所によって、遺言書の現状そのものを検証する手続きです。遺言書の現在の状態を明確にするための手続きで、それ以上でもそれ以下でもありません。
ですから、検認を受けなくても遺言書が無効になるわけではありませんし、検認を受けたから有効になるわけでもありません。
検認期日に出席した相続人から「遺言者本人の筆跡ではないからその遺言書はおかしい」とか「遺言書の日付においては本人は認知症だったから遺言書を書けるわけない」などの発言がされることがあります。
相続人からそのような発言があった場合には「意見」としてその要旨が「検認調書(検認手続きで裁判所が作成する証拠書類)」に記載されることはありますが、特段の意味はありません。
もし相続人が遺言書についてそのような事実の有無を争いたければ、別の裁判(例えば「遺言無効確認の訴え」)をしなければなりません。
「検認」は遺言書の有効や無効を判断する手続きではないということです。
また、同じく検認期日に出席した相続人から「その遺言書は遺留分を奪うものだからおかしい」と発言がされることがあります。
しかし、仮にそうであったとしても、遺留分は別途請求が行われなければならないですから、検認期日でそのような発言があっても特段の意味はありません。
遺言書の検認をしなかったら…デメリットはたくさんある
遺言書の検認をしなくても、必ずしも遺言書自体が無効になるわけではありません。しかし、遺言書の検認手続きを怠った場合、次のようなデメリットがあります。
- 5万円以下の過料の制裁がある
- 検認していない遺言書では相続登記(不動産の名義変更)ができない
- 検認を怠っただけではなく、積極的に遺言書を隠匿した場合には、相続欠格により相続権が失われる
- 検認を怠ったことにより他の相続人や利害関係人(受遺者など)が損害を被った場合、賠償責任を負う
- 最悪の場合、事情により遺言書自体が無効となることもある(判例)
「5」であげた判例とは次の内容です。
遺言者の死後に遺言書を発見した後も、自ら検認手続きをとるなどせず、他の相続人から繰り返しの来訪と遺言者の遺産に関する追及を受けた際にも遺言書の話を全く持ち出さなかった等の事情があった場合、当該関係者の供述の信用性が否定され、自筆証書遺言は無効となった裁判例(仙台高判令3.1.13)。
結局、発見した遺言書はどうするべきか?
まず、その遺言書が封印されたものであれば、開封せずに裁判所で検認の手続きをするべきです。
遺言書が封印されていなくても、裁判所で検認の手続きが必要です。
もし、うっかり遺言書を開封してしまったとしても、一般的には困ったことにはならないので、通常通り裁判所で検認の手続きをするべきです。
これまで説明したように、うっかり開封してしまったこと自体はあまり問題視されませんが、遅滞なく検認の手続きをしない場合には、遺言書の効力に関わってくることもあり、最悪、遺言書自体が無効となるケースもあります。
ですから、もしあなたが遺品を整理していて自筆の遺言書を発見したら、無用なトラブルを避けるためにも速やかに検認の手続きをすることをおすすめします。
最後に|いまなら無料相談が受けられます
私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでは、「【司法書士監修】遺言書を見つけて勝手に開けると?開封マニュアル大全」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。
このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。
- 自筆証書遺言は勝手に開封できないが、うっかり開封しても特に何にもならない
- 公正証書遺言は勝手に開封してもよい
- 自筆証書遺言は裁判所に提出して速やかに検認の手続きをしなければならない
遺言書の検認手続きや、その後の遺言の執行(遺言の内容通りに行う相続手続きのこと)を速やかに行うためには専門的な知識が必須となります。個人の力では限界があるかもしれません。
ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。
専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。また相続に関連する問題・相続税の申告に強い提携の税理士や弁護士もおりますので、全方向のサポート・代行が可能です。
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