【司法書士監修】相続で使い込みを疑われたら…?|解決方法と防止策
相続が開始して、他の相続人から故人の遺産の使い込みを疑われてしまったら…?。同じ悩みをお持ちの相続人の方は多いと思います。
「全部の領収書を保存していないので使い道を完全に証明できない」「故人から財布を預かっていただけなので疑われるのは心外だ」…このようにおっしゃって相談に来られる方が後を絶ちません。
このページでは、創業20年の相続手続き専門司法書士が「相続で使い込みを疑われたら…?|解決方法と防止策」についてお伝えいたします。
領収書や「使い道の説明」は完璧にしなければいけないのか?
まず結論をお伝えすると、「領収書の保存や使い道の説明は必ずしも完璧である必要はありません」となります。
ですから、もし、領収書の一部を紛失してしまっていたり、そもそも領収書を受け取ってない場合や、お金の使い道を詳細に他の相続人に説明できなくても、安心してください。
「使い込んでいない」ことをどの程度まで明らかにするのか
たとえば、一度に大きな金額が引き出されている場合は、何に使われたのか、支払先は誰か等、領収書や請求書が必要となってくるのは当然です。
しかし、一回の引き出し金額も少ないような場合、大まかな使い道について特定されていれば(例えば「日用品」「買い物」等)、領収書等がなくとも裁判上は大丈夫だとの判断がされています。
この裁判のポイントは次の通りです。
- 葬儀後に相続人Aが領収書の写しも添付されない表計算ソフトで作成された「諸経費一覧表(生前の経費や葬儀費用等)」を相続人Bに送り付けた
- 相続人Bは「諸経費一覧表」に掲載されている「母関連費202万5940円」については具体的な支出先が特定されていないし、領収書も添付されていないので「使い込んだのではないか?」と疑った
- 裁判所は「表の中に”小遣い””買い物”程度に書いてあれば”経費”と解釈できるので、それで十分。使い込んだとまでは言えない」と判断。
遺産を使い込んだかどうかは「社会通念に照らして判断」
上でお伝えした裁判の結論が、常にあなたのケースにも当てはまるわけではありません。
しかし、いわゆる「雑費」については、「それが社会通念に照らし相当と認められる額にとどまるものである限り領収書などの資料がなかったとしても経費として発生したものと推認すべきである」と同じ判決の中で明示しています。
この裁判では「202万5940円」の使い込みが疑われたわけで、金額としては高額ですが、これは一度に引き出された金額ではなく、故人に渡した小遣いや、故人の身の回り品の買い物の金額が積もったものです。
これを「すべて事細かに証明しろ」という方が常識外れとも言えます。その点からも、この判決は極めて常識的なものと言えるのではないでしょうか。
使い込みを疑われやすいケースはこれだ!
「使い込みを疑われやすいケース」として次のような場合があげられます。もしあなたがそのような立場であれば十分に気を付けてください。
死亡直前に被相続人名義の預貯金を引き出してしまったケース
「葬儀代や相続の手続き代などで費用が掛かるだろうから…」という理由で、被相続人(故人)が無くなる前に、キャッシュカードなどを使って勝手に預金を引き出してしまうケース。
非常によくある事例で、他の相続人の了解がある限りは特に問題がないと考えますが、「勝手」に行うと、後から使い込みを疑われる原因となってしまいます。
葬儀代を含め、相続にかかる各種の費用は、実際に相続が開始してから相続人全員で話し合えば良いことですから、わざわざ使い込みを疑われるような危険な行為は控えた方がよいでしょう。
必要に迫られて、あらかじめ引き出す場合には、領収書や請求書は必ず保管しておくようにしましょう。
死亡後に被相続人名義の預貯金を引き出してしまったケース
こちらは「死亡後」に「勝手」に引き出したパターンです。そもそも死亡後に預金を引き出せるのかが疑問かもしれません。
金融機関は、相続人からの死亡の連絡を待ってはじめて口座を凍結します。ですから、相続人から連絡をしない限りは、凍結されず、ATMを使って自由に預金が引き出せることになります。
これも他の相続人の了解がある限りは問題になりませんが、「勝手」に行うと、後から使い込みを疑われる可能性があります。
必要に迫られて、引き出した場合には、領収書や請求書は必ず保管しておくようにしましょう。
生前から通帳を預かっていて事実上財産管理を任されていたケース
このケースは一番厄介です。
たとえば、高齢になると足腰も弱くなるため、同居の親族などに通帳を預けて、預貯金の入出金や買い物などを依頼することがよくあります。その際に、わざわざ他の親族(相続人となる人)の同意など得ないのが普通です。
しかし、いざ相続が開始したのち、引き出し行為が他の相続人に明らかになると、「使い込みをしていたのではないか」と疑われることになります。
これを生前に防ぐ方法としては、あらかじめ「財産管理等委任契約」を結んでおいたり、「任意後見契約」を締結しておくなどで対処できます。くわしくは後述します。
相続で遺産の使い込みを疑われた場合の対処方法
次に、使い込みを疑われた場合の対処方法をお伝えします。
いつの時点で使い込みを疑われたかで、対処方法が異なります。
遺産分割「前」に使い込みを疑われた場合
相続開始後、遺産分割の話し合いをする前に使い込みを疑われた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
上でお伝えした裁判例では「領収書など詳細な使い道を完璧にする必要はない」とのことでしたが、決して裁判になることのないように、なるべく早く他の相続人へ詳細な情報を提供するようにしましょう。
他の相続人が疑いを持っているということを否定的にとらえず、単に「詳細な情報を知りたい」というだけのことと考えましょう。
ですからあなたから積極的に情報を開示するのです。これで円満に解決することも大いにあります。
相手が納得しなかったら?
納得しない相手に「遺産分割調停」を申し立ててもらいます。
本来は「使い込み」の問題は「遺産分割調停」の中では取り扱ってもらえないのですが、便宜的に扱ってもらえることもあります。
もし遺産分割調停の中で「使い込み」の問題が解決できない場合には、遺産分割調停では扱われず、「使い込みの部分だけ別の裁判を提起する方法で解決してください(とりあえず残っている遺産だけ分割します)」となります。
遺産分割「後」に使い込みを疑われた場合
遺産分割が終わった後に、使い込みを疑われることも時々あります。
非常に対処の難しい問題で、事例によって対応方法が異なります。
相手方から「使い込みをはじめて知ったのでそのそも先の遺産分割は無効だ」として遺産分割のやり直しを求められることもあります。
また、「すでになされた遺産分割は仕方がないが使い込みは許せないので使い込みの金額を損害賠償請求する」と求められることもあります。
いずれにしても訴訟を視野に入れた話し合いを慎重に行うべきですから、弁護士案件と言えるでしょう。
予防策|遺産の使い込みを疑われないようにするには…
このように、遺産の使い込みを疑われないようにするためにはどうすればいいのでしょうか?もちろん予防策はあります。
生前に財布を預かる場合は「財産管理等委任契約」を
体力の衰えに備えて、生前から家族の財布を預かる場合には、あらかじめ「財産管理等委任契約」を締結しておくとよいでしょう。
例えば「預金の引き出しについて代理権を与える」などの内容で正式な契約を結んでおけば、あとから不正な引出しを疑われるリスクを軽減することができます。
「財産管理等委任契約」は決まった様式はないのですが、公証役場で「公正証書」の形にしておけば、より信頼性は高まり、本人の代理人として銀行などの金融機関に提示することもできます。
■認知症の家族に朗報|預金の引き出しが簡単に【司法書士監修】
認知症に備えて財布を預かるなら「任意後見契約」を
体力の衰えではなく、能力の衰え(認知症)に備えて家族の財布を預かる場合は、あらかじめ「任意後見契約」を締結しておくとよいでしょう。
いざ本人が認知症になってしまった場合は、後見人は裁判所が選ぶため、必ずしも家族が後見人になれません。これを危惧して後見人の手続きを行わず、勝手に家族が本人の口座から預金を引き出してしまうようなことがあります。
そしてこのことが「使い込み」を疑われる原因となります。
これを避けるには、本人の能力がはっきりしているうちに、財布を預ける家族を後見人とする契約を締結しておくことがベストです。この「任意後見契約」は必ず公証役場で「公正証書」にする必要があります。
死亡後は「不用意に預金を引き出さない」
いざ相続が開始したら、不用意に故人の口座から預金を引き出さないようにすることが賢明です。そしてどうしても預金の引き出しが必要な場合には、使途と金額を伝えたうえで他の相続人の同意を得ておくことが好ましいでしょう。
もちろん請求書や領収書などの資料はかならず保存するようにしてください。
さいごに|いまなら無料相談が受けられます
私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでは、「【司法書士監修】相続で使い込みを疑われたら…?|解決方法と防止策」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。
このページでお伝えしたかったことは次の3点です。
- 疑われてもあなたから積極的に情報を開示すれば大抵は解決する
- 領収書の一部を紛失したり使途を完全に説明できなくても構わない
- 相手が納得しなければ裁判を視野に入れなければならない(弁護士へ相談)
遺産の使い込みを疑われて話し合いで解決できる可能性があるか否かは、いろいろな事情を伺ったうえで専門家にしか判断できません。
ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。
専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。また相続問題に強い提携の税理士や弁護士もおりますので、全方向の対応が可能です。
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東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
公益社団法人成年後見リーガルサポート東京支部会員
家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
公益財団法人東京都中小企業振興公社「専門家派遣事業支援専門家」登録